2011年10月に始まったkilk records sessionも今回で6回目を迎える。前回、前々回はレーベル・オーナーに集まってもらい、レーベル座談会を行った。忌憚なき意見が飛び交い、未来へ繋がるヒントが見える実りある回となった。今回はレーベルという枠を飛び越えて、CDショップ座談会を行うことになった。
集まってもらったのは、大宮に店舗があるmore recordsの奈良輝臣、渋谷に店舗をかまえる残響shopの店長である田畑猛、そしてdiskunion営業部の矢野有人。司会は、kilk recordsのレーベル・オーナー森大地。CDが売れないといわれて久しいが、それぞれの店が考えていることは決して暗いものではなかった。未来に向けた座談会を一字一句見逃さずに、読み込んでほしい。
進行&文 : 西澤裕郎
kilk recordsのおすすめタイトル
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nemlino / 100oracion
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お店の中だけでなく、根っこから外に広げていくアプローチが必要(矢野)
森大地(以下、森) : 今日はお忙しい中お集りいただき、ありがとうございます。まず最初に自己紹介からお願いします。
矢野有人(以下、矢野) : diskunion(以下、ユニオン)の営業部でインディーズの委託部門を担当している矢野と申します。本部に移るまでは下北沢店で働いていました。僕はTACOBONDSなどのバンドもやっているので、一概にCDショップだけではない、バンドマン目線の意見もあると思っています。なので、本日はユニオンの代表というよりも、一店員の意見として聞いてほしいなと思います。よろしくお願いします。
田畑猛(以下、田畑) : 残響shopの店長をしております田畑と申します。うちは、同じスペースの中に残響塾という塾があって、塾長と店長の僕でタッグを組んで一つの空間で異なる運営をしています。残響shopがオープンしたのが2011年の5月3日なんですけど、プロモーションもまったくせず、自分たちでいろいろ試しながら、ここまで運営してやってきました。よろしくお願いします。
奈良輝臣 : more recordsの奈良です。もともと全国チェーン展開の某CDショップの店長や本部も経験したんですけど、レーベルと直取引をしたことがきっかけで、音楽をやってらっしゃる人たちの現場の熱を直に感じて、不況といわれる音楽業界にもやり方次第でまだ可能性があるんじゃないかなと思い、2011年9月9日に有志を募って大宮にオープンしました。メディアや既存のルートで音楽を知ったお客さん以外にも、音楽を届けたいと思ってやっています。よろしくお願いします。
森 : 今回、この3人をお呼びしたのは、これからの時代に対応していく店舗さんだと思ったからです。インストア・ライヴや独自のキャンペーンをしたりして、CD以外のことも考えていらっしゃる。今日は、これからどうやって音楽を売っていきたいのかを、CD屋さんの目線で聞きたいと思っています。この先、5年、10年と時代が変わっていく中で、作戦みたいなものがあればお聞きしたいのですが、田畑さんはどうですか。
田畑 : 確かにCDが売れなくなってきているのは数字にも出ているんですけど、音楽が好きな人の総数はそんなに変わってないと思っています。音楽はリスナーがいて初めて成り立つ業界なので、そこをどう巻き込むかということが重要なんじゃないかなと。それにあたって、パッケージが出来る前の段階から何かを作り上げていくことが、今後の1つの展開になるんじゃないかと思っています。現在、考えているのが、アーティストからこれをやりたいですっていう具体的なプランを募集するんです。彼らの言っていることに賛同してくれる人がいたら、そこに投資してもらいます。そうすると、後ろ盾のないアーティストでも、自分のやりたいことが伝われば、実現できるわけですよね。それが実現すれば、インディペンデントの逆襲が始まるんじゃないかなって(笑)。そういう意味で、根本から変えていかないといけないと思っています。
森 : CD屋さんっていうより音楽屋さんっていうイメージですね。矢野さんはどうですか。
矢野 : これは個人的な意見なんですけど、2000年代前半までの、スーパーカー、くるり、ナンバーガールのような、アイコン的バンドがいないのが今だと思うんですよ。あの頃って、インディーズとメジャーが地続きだったんですよね。一歩踏み込めば、アンダーグラウンドなシーンが広がっているというか。でも今は、好きになってもそこで止まっちゃって、ルーツに辿り着きづらい。OTOTOYの飯田(仁一郎)さんとも話していたんですけど、ユニオンはマニアックな印象がある。ROCKIN'ON JAPANを読んでいる人が、ユニオンの雰囲気になかなか馴染みづらいっていう状況を変えたいんです。田畑さんもおっしゃっていましたけど、お店の中だけでなく、根っこから外に広げたアプローチが必要ですよね。
森 : お店側が、お客さんの補佐というか、音楽の提案する役割があるのかもしれないですね。
まったく免疫のない人と音楽をどうクロスオーバーさせるか(田畑)
森 : どちらもストーリーを作っていくことを重視しているのが共通していますね。奈良さんは、そのあたりいかがお考えですか。
奈良 : ビジネス・マーケティングの話で、例えば化粧品を売ることに注力していくのか、化粧品を使った美容のスタイルを提案することによって商品を売ることに注力するのかっていうのがありますよね。それを音楽にあてはめると、音楽の楽しみ方を提案していかないと、と思っていて。音楽の聴き方がCDなのか配信なのかって言われて久しいですけど、それも含め転換期だと思うんですよね。うちは音楽コミュニティ・ストアを謳っていて、お客さんとまだ知らない音楽が出会う場所を提供しています。それって昔はあったんですよ。名物バイヤーさんがいて、その店員さんが薦めてくれる出会いの場所や、そこに集まるお客さんたちっていう空間が。いつの間にかそういう場所がなくなって、CDを大量に売ることに特化していっちゃって。
森 : 確かにそうかもしれないですね。
奈良 : ひとつヒントになることがあったんです。2011年の年末に、more records店内でFragmentの主宰する「術ノ穴」レーベルと合同で忘年会をやったんですよ。そこに、アーティストとお客さん、レーベルの方達が一同に会したんです。そこでまた新しい出会いとコミュニティができて、音楽を大好きな人が一緒に盛り上がる。それも音楽の楽しみ方だと思ったんです。どうにかしてCDを売っていかないとという頭でやっていると、マーケットの媒体ニーズが変わったら、どうにもならなくなってしまう。だから、CDを売りたいのか、音楽をお客さんに届けたいのか、どういうスタンスでやっていくかを意識する必要があると思っています。だから、僕はそういった場になる実店舗があることがすごく重要だと思っていて。残響さんの塾もそうですよね。
田畑 : そうですね。
奈良 : 今は、お客さんに音楽を届ける場所がなくなっているから、リスナーにとっても知らない音楽が増えているし、限られたヘビー・ユーザーでなければネットでも辿り着けないんですよ。それに、今はCDショップに行くのが面白いと思ってるお客さんってすごく少なくなってると思う(笑)。だって、お店が面白いことをやっていないんだもの。
森: そこは僕もカギだと思っています。kilk recordsも、あくまで最初は単なるレコード会社的なスタンスだったんですけど、CDだけでなく、リアルにお客さんと繋がることのできる“ライヴ”という場もうまく連動していかなきゃなと思い始めたんです。そういう意味でも、残響shopはCDショップとしてだけでなく、塾やライヴをお店の中で頻繁にやったりしているのがおもしろいですよね。
田畑 : おもしろいと思ったのは、残響塾の企画で、毎週月曜日にビジネス系のセミナーをやっているんですね。集まるのは、30代半ばから50歳くらいのビジネスマンなんですけど、セミナーが終わってから軽い飲食をして、軽いミニ・ライヴをやるんです。まったくインディのアーティストのことを知らない人たちの前で演奏するんですね。それで、ギャランティを募ったんです。
矢野 : 投げ銭みたいな感じですね。
田畑 : そうしたら、ギャランティが2、3万円ほど集まったんですよ。しかも、5曲入り1000円の音源が10枚売れた。つまり50人いたら5人に1人買ってくれた計算になります。そのときに軽いパニックがアーティストの中で起こっていて。普通のライヴ・ハウスでやっても反応がなかったのに、アコースティック編成で音質もよくないところで、ぶつけ本番でやったら、こんなにギャラをもらえて、CDも売れたと。
森 : 確かに、ライヴ・ハウスではなかなかない光景ですね。
田畑 : 縦の繋がりは強いけど、異業種の人に目を向けることが音楽業界でいかに少ないかってことなんですよね。それを見たときに、もっと広い範囲で捉えてもいいかなと思ったんです。ビジネスの話にも繋がるんですけど、まったく免疫のない人と音楽をどうクロスオーバーさせるかが企画のヒントになっているなと。それって、お金を持っている人からお金をもらうって発想じゃなくて、単純にステージを見て感動したものに対する対価を払っていただくってことなんです。逆にいうと、音楽を好きな人のほうが財布のヒモが固い。いろいろな選択肢を知っているからリスクの少ないほうを選んじゃうんですね。でも、そうじゃなくて、色んな人に音楽を知ってもらう機会を増やすべきだと思うんですよね。
矢野 : 今の田畑さんの話を聞いて感銘を受けましたね。スペースの問題がありますけど、ユニオンも基本的に、おもしろいことをお店から発していこうって考えてやっていますから。
森 : 確かにそうですよね。ユニオンさんはいまのライヴ・ハウス・シーンで輝いているアーティストが連動して売れているという印象がありますけど、そこはやはり何か意図するところもあったりするのでしょうか?
矢野 : 自分で言うのも何ですけど、ユニオンの看板は大きいと思うんですよ。いいと思ったアーティストをユニオンがプッシュすることで、ライヴに行ってみようと思う後押しになればと思っているので。
地域密着で繋がって出来ることがまだまだある(奈良)
森 : ライヴといえば、more recordsは「more fes」というイベントを開催するんですよね。
奈良 : ええ。5月3日はインストアでの「acoustic day」、5月4日は大宮のクラブ「444quad」を借りた「electronic night」と銘打って2日開催します。4日にはkilk records所属のhydrant house purport rife on sleepyや先のFragmentにも出演してもらいます。大宮って大きな街なのに、ほとんどライヴ・ハウスがないんですよ。CDショップもですけど。だから、中々音楽シーンが盛り上がらない。でもアーティストはいるんです。そこをつなぐことができれば逆に、新しいことが出来ると思っていて。イベントは一つのカギだと思っているので、手始めにバーンとフェスをやってみようかなと思って。ライヴの合間にアーティスト同士の交流もあったりすればいいし、そこにレーベル・オーナーもいたらおもしろいですよね。
田畑 : いろいろできそうですよね。地域密着だと。
矢野 : CDショップとかライヴ・ハウスだけではない展開も出来そうですね。
奈良 : そうなんですよ。オープンした時から、大宮周辺の美容院やカフェに、うちにあるCDを何点か置いてもらって、それをBGMにしてもらったりしていて。気に入った人はそこでも買えるし、more recordsにも売っていますよって言ってもらうんです。うちはtwitterやFacebookやアメブロといったSNSも多用していますけど、それだけじゃなくて、周りのお店や知り合いから、店が出来たことを知って来てくれる人もたくさんいますし、地域密着で繋がって出来ることがまだまだあるんです。
田畑 : うちも、アパレル関係で現代音楽に詳しい人とか、そういう方に塾で話してみてもらうとかやってみたいなと思っていて。場所があるっていうのはそういう強みがあるのかなと。
森 : 横の繋がりっていうのも大きなカギかもしれないですね。言い方を変えれば、マーケット層を広げる、要は音楽好き以外にも広めていこうっていうことですもんね。
田畑 : そうですね。その部分はうちでは塾が担う部分なんですけど、ショップとしては音楽好きも満足してもらえるようにしています。一昨日、ライヴ企画が決まったんですけど、「残響ショップの◯◯」っていう企画をライヴ・ハウスと連動で打つことになって。
矢野 : ◯◯ってタイトルなんですか?
田畑 : そうなんです。出演アーティストは当日まで明かさないんですよ。「誰が出るから来てよ」って形ではなくて、「誰が来るかわからないけど来てみたら? 」って形で。今って、ライヴ・ハウスにしてもフェスにしても、誰が出るのかを気にして行く流れになっているじゃないですか。要するに、バンドのファンが多くて、音楽をやっているからふらっと行ってみましたって人は少ない。タイム・スケジュールを見てハシゴをするみたいな。SNSを見てもそんな会話ばっかりなんですよね。
森 : 確かにそうですね。
田畑 : ライヴ・ハウスに行くという文化を根本から見直そうってなったときに、誰が出るから行くってスタイルを敢えてやめようかなって思って、◯◯にしたんです。後日談として、残響ショップの企画がおもしろかったという話が広まって、誰が出ていても人がくる場所にしたい。要は、企画に人を集めたいと思っているんですね。それだとインディもメジャーも関係ないし、タイムテーブルも分からないから、行っておけばよかったと後から思うしかない。しかも、誰が出るか分からないから、そのアーティストのファンじゃない人も多いと思うんですね。そうすることでアーティストも忌憚なき意見を知ることが出来るし、それが一番フラットな形でライヴ・ハウスに行く行為を促す、1つのアクションになるんじゃないかなって。
矢野 : チケットは残響shopで買った人じゃないともらえないんですか?
田畑 : 残響shopで3000円以上買い物をしてくれた人には1枚、5000円以上だったら2枚って形でやろうと思っています。当日券も考えていますけど、そこはショップありきでやりたいなと思っていて。
矢野 : つまり、朝霧JAMみたいな感じですよね。絶対に外れがないから、チケットを買おうっていう。
田畑 : そうですね。まずは、ちっちゃいところから出来ることをやっていけたらと思っています。
近くの4人に売れないものが100万人に届けられるわけがない(田畑)
森 : 今はアーティスト自身も動いていく時代だと思うんですね。今までなら、お店は商品を置いて、お客さんは雑誌とかTVで見たものを買っていた。それが、今はいろんなところから情報を得るようになったから、お店側もアーティストも提案力が必要になっている。
矢野 : 2000年代前半くらいまでは、レーベルの人間がライヴ・ハウスに行って青田買いをするってことが実際にあって、バンド側もそれを待っていたところがあると思うんです。自分からアプローチするわけでもなく、いつかライヴができたらいいなみたいな感じで。でも、今は青田買いなんて昔ほどないですし、ただ待っているだけじゃダメで。だからといって戦略的になれってことでもなくて、1年後にワンマンやりたいとか、先輩バンドを呼べるようになりたいとか、目標でもビジョンでも持つことが大切だと思うんです。
森 : 確かにそうですね。そうは言っても、端から見てて甘えていると思うアーティストは沢山いますよ。ただ良い音楽を作るということ自体だけが目標なら、なにも全国流通で発売する必要もないですよね。その素晴らしい音楽を多くの人々に聞いて感動してほしいということが目標なら、その重要な部分を誰かに頼っているだけの考え方じゃ甘いと思います。
奈良 : それはそうですよ。だってお客さんに届けたいんでしょ? 聞いてもらいたいんですよね? って話ですからね。
森 : CD屋さんが「うちはいい音楽を置いているのに、売れないのはお客さんの耳が悪いせいだ」っていっているのと一緒ですからね。広めるための努力が必要ですよね。
田畑 : だから、アーティストのマインドも変える必要があるかなと思っています。塾では、音源制作セミナーっていうのもやっていて、いわゆるアマチュアっていわれる人たちを少人数で集めて、10週に渡って講義をして最終的にプレゼンまで持っていってもらうんです。まず最初に、それぞれのを音源を聞いて感想を求めるんですよ。どういう思いで作ったかまで聞いたあとに、「この音源、いくらなら買う? 」って他の受講生に聞くと全員0円って言うんですよ。でも、自分の番が回って来ると、逆に0円って言われるんですよ。全員、誰も他の人もCDを買わないんです。
森 : それはすごい状況ですね。
田畑 : でも、近くの4人に売れないものが、1万人、10万人、100万人に届けられるわけがない。それを現実として突きつけて、なぜここに置きたいのかから、なぜ音楽をやっているのかまで、自分を見つめ直せってばしっと言うんです。要するに、見つめ直すってところが一番大きい。言ったら、門前払いをくらったあとにみんな考え始めたわけですよ。でも8週間講座を受けて、9週目でお店に置くってなったときに説明できないんですよね。アプローチできないんですよ。
矢野 : バンドというかアーティスト活動はそれなりある人たちなんですか?
田畑 : キャリアはそれぞれですね。でもそうやって洗い直してみると、全員同じレベルで、自分の売りは何かを説明できない。例えば、目標は年間200枚売りたいっていうんですけど、それを俺に言われてもって思っちゃう。要は一緒にやっていくわけだから、どういうメリットがお互いあるのかをちゃんと話せるアーティストじゃないとこちらも置けない。それを分かっているアーティストは勝手に売れちゃうと思うんですよ。
森 : 一つ質問なんですけど、お店に音源を持ち込んでくる人がいる中で、販売の決め手となるのはどこなんですか。
田畑 : さっき言ったように、ここで何をしたいかを話せる人。残響shopに置くにあたって、こういう企画もできてますとか、こういうところを目指していて、その足がかりとして置きたいとかって感じで、ちゃんと自分たちの魅力を発表できる人たち。それだと、僕たちもお客さんに代弁できるんですよ。もちろん、音楽の善し悪しが大前提にありますけど。
森 : そこらへん、ユニオンさんは敷居が高そうですけど。
矢野 : いや、うちはほぼ来るもの拒まずですね。オールジャンルのお店なので、僕のところが窓口になっていて、そこから各担当者に回します。各々の判断基準はわからないんですけど、インディであればノイズも何でもとりあえず置きましょうって言っています。どんどん持ってきてくださいって。
田畑 : うちも拒んでいるわけでないですよ(笑)。
森 : more recordsさんはどうですか?
奈良 : うちは、まだそれほど持ち込みアーティストの数も多くないので、ほぼ置いてみましょうって感じですね。 最近では、広島から来てくれた人もいました。うちの場合は、Facebookで持ち込みアーティストが自由に投稿できる「originating more records」ってオリジナル・ページを作ったんですよ。やりたかったら、動画とか告知を自分でアップしてって言っています。あ、さっきの音楽コミュニティ・ストアの話じゃないですけど、うちに持ち込んだアーティストがレーベルとつながったり、アーティスト同士がつながって一緒にライヴ・イベントを組んで100人集まったなんて話や、企画を立ちあげたりなんて動きも出てきていますね。
うちらはスタート地点が今だから、いくらでも可能性がある(奈良)
森 : 今日の話を聞いていたら、先は暗くないって思いました。むしろ昔よりも活性化できる可能性もあるんじゃないかと思います。最後に、それを踏まえて今後の抱負をお願いします。
田畑 : 森さんもおっしゃったとおり悲観することはないなと。今よりもっと明るい未来が待っていると思ってやっていることなので。実はそんなに大きな理想像みたいなものを僕自身は持っていなくて、CDが続いていても、配信中心でもいいと思っていて。そのもの自体にこだわるんじゃなく、それを如何に伝えられるか。それが続けていけたらいいなと思っています。
矢野 : 自分がバンドをやっているシーンに限定したことなんですけど、2009年から上向きになっている感覚があるんですよ。僕らの世代が社会人になって、ライヴ・ハウスからも足が遠ざかってしまったのが、今の世代は社会人になってもライヴ・ハウスに来てくれるんですよね。それは、東京ニューウェーブの世代が盛り上げたり、東京ボアダムなどをやってきた積み重ねが、遊び場として出来上がってきている感じもあって。今後は、もっと広く見てもらえるアプローチをしていきたいですね。僕もそんなに具体的な理想像があるわけではないんですけど、1アーティストごと、やってあげられることを考えながらやっていきたいですね。
奈良 : 今、音楽業界自体がやばいっていうのはもう誰でも知ってるじゃないですか。確かに音楽バブルがあった90年代に比べて売上高が落ちているのは間違いないんですけど、そういった状況も音楽に携わり始めた人たちは、考え方が全然違うと思うんですよ。kilk recordsは2年目ですっけ?
森 : そうですね。
奈良 : うちらはスタート地点が今だから、昔と比較して云々言っている人たちとは違う目線でやっていると思うんですよ。いくらでも可能性はあると思う。じゃなきゃ、あえてやらないでしょ(笑)。そういう人たちで繋がってやっていけば、可能性はすごくあると思いますよ。
森 : お客さんも、ショップも、レーベルも繋がって協力していくことが大きなカギかもしれないですね。
矢野 : これを機に情報交換できる場所を作っていきたいですね。
奈良 : 例えば、3店舗でプッシュしてみるアーティストや、合同でのイベントも出来ますし。何とかして、お客さんにいい音楽を届けていきたいですね。
田畑 : 対レーベルとかで、ライバル視しても意味ないですからね。闘うのはXboxとか携帯電話とか、そういうところだと思っているので、協力できるところはしてやっていきましょう。
森 : これを機に密に盛り上げていきましょう! ありがとうございました。
PROFILE
kilk records
2010年、Aureoleの森大地により設立。「精神に溶け込む、人生を変えてしまうほどの音楽との出会い」。kilk recordsはそういった体験を皆様にお届けすることを第一に考えております。オルタナティブ・ロック、ポスト・ロック、エレクトロニカ、テクノ、サイケデリック、プログレッシブ、フォーク、アヴァンギャルド、アンビエント、ヒップ・ホップ、ブレイクコア、インダストリアル、ジャズ、クラシカル、民族音楽... 。魂を震わせるような音楽であれば、ジャンルは一切問いません。kilk recordsが最もこだわりたい点は「独創性」です。信じられないほどの感動や興奮は「独創性」から生まれるように思えます。これから多数の作品をリリースしていきます。末永くkilk recordsにお付き合いくだされば幸いです。
2012年1月18日に、kilk recordsからデビューしたLööfからも2曲フリー・ダウンロード
2人組の歌ものエレクトロニカ・ユニット、Lööf(レーフ)。これまではネットを通じ、主に海外より評価され続けてきた彼ら。まさしく待望のデビュー作とも言えるフル・アルバムがついに完成した。彼らを語る上でまず特筆すべきは、チヒロのヴォーカルであろう。その場の空気を変える力を持った淡く美しい歌声である。
diskunion
新品CD店と中古店の2つの顔を持ち合わせるチェーン店。コアな音楽ファンを対象とした品揃えが豊富。CD、レコードやDVDのほか、オーディオ機器、書籍、ゲームやバンドTシャツなど多彩な商品を扱っている。新宿、渋谷の各地区には「ロック館」「ジャズ館」など細分化された小規模店舗が散在している。レコード関連商品を扱う店舗の名称は「ディスクユニオン」、新品オーディオ機器を扱う店舗は「オーディオユニオン」、中古オーディオ機器を取り扱う店舗は「セカンドハンズ」と屋号を変えている。この他、海外直輸入盤や国内インディーズ作品の卸販売も手がけている。
more records
大宮にある、音楽に出会えるコミュニティCDショップ「more records」。新旧問わず良質な「音楽」を取り扱っています。みなさまに「音楽」の出会いを!!
田畑威(残響shop)
幼少期にクラシックピアノのレッスンを受け音楽に興味を持ち始め、青春時代はTVゲームに熱中するあまり全国大会にまで出場し全国3位になる記録を今現在まで自慢にしている。OSMスクールオブミュージック卒業。音楽雑誌のライター業やイベント企画などの活動を行いながら28歳までフリーター生活を送る。大手SNSサイトのmixiを通じて交流があった残響レコード代表河野氏から直々にオファーを受け2011年4月に残響レコードに入社、同年5月にオープンした残響shopの店長に任命される。