Portmanteau――それはdip in the poolの木村達司を中心とした、モーガン・フィッシャー(多くの日本国内のCMや映画音楽などの制作、THE BOOMなどへの参加で知られる英国人キーボティスト)、安田寿之(元Fantastic Plastic Machineで、現在はソロのエレクトロニック・ミュージック・アーティストとして活躍している)の3人によるプロジェクト。彼ら3人がそれぞれイメージする“アンビエント”を制作、曲によってはコラボレーションという形をとり、それを1枚のアルバムにコンパイルした作品がこのたびリリースされる。ゲスト・ヴォーカルに甲田益也子(dip in the pool)、本田みちよ(OVERROCKET)を迎え、アンビエント、エレクトロ、ヒーリング、民族音楽など、さまざまなエッセンスが絶妙にブレンドされた、2013年の“Portmanteauのアンビエント・ミュージック”のひとつのかたちがここに誕生。OTOTOYでは、HQD(24bit/44.1kHzのwav)で、1週間先行配信。アンビエントな時間をご堪能ください。
木村達司、モーガン・フィッシャー、安田寿之の3人がイメージする2013年のアンビエント・ミュージック
Portmanteau / Portmanteau
【配信形態】
HQD(24bit/44.1kHzのwav)
【価格】
単曲200円 / アルバム1,500円
発祥の時代には特異だった"アンビエント"という音楽も、時代の流れのなかで異種交配しつつ普遍化し、いまでは多様なジャンルと影響しあっている。今作は単純にアンビエント・ミュージックを標榜したものではなく、三人の音楽家それぞれが多種多様に存在する"アンビエント的"要素、記号のなかから取捨選択し膨らませた、言わばアンビエントでありながらアンビエントに囚われてはいない、イメージ豊かに静謐ななかにもオーガニックで微熱を帯びた現代の電子音集となっている。 (木村達司)
2013年、Portmanteauののアンビエント・ミュージックとは
1975年に交通事故で入院したブライアン・イーノが、18世紀ハープ・ミュージックのレコードを、オーディオの片方のチャンネルが壊れた状態で、なおかつ小さな音で聴いたことによって思い付き、提唱したといわれている、アンビエント・ミュージック。雨の音は気にならないけれど、よくよく聴いてみれば雨の音だって音楽ともいえるでわけで、雨のように日常に溶け込む音楽のことをさしている。少し定義っぽく書けば、「周囲の環境の一部になるような音楽のありかた」のことで、そうした日常生活にとけこんだ音楽を人工的につくってみようというのが、アンビエントのかなりざっくりとした定義といえよう。
2000年代のいつ頃からか、作業用BGMという言葉がネットを中心に使われるようになった。ニコニコ動画、YouTubeなどを検索してみれば、そうしたミックス集や自作らしき音楽がいくつもヒットする。作業用BGMというのは、作業の邪魔にならないような無意識に聴ける音楽のことをさしている。そう考えると、これだってアンビエントと言えるはずだ。しかし、それらの音楽がアンビエントとは言われることはあまりない。静かなエレクトロニカがあれば、インストゥルメンタルのポスト・ロック的なものもあったり、かなり歌が聞き取れる日本語歌詞入りの曲まである。それをジャンルでわけてしまうと、アンビエントからはほぼ遠くなってしまう。そんな状況だからこそ、「周囲の環境のいち部になるような音楽のありかた」という捉え方から、アンビエントについて考えてみることは大切なことなんじゃないだろうか。
そうした問いに対して真摯に向かいあい、2013年におけるアンビエント・ミュージックをイメージして実際に制作されたのが、本作『Portmanteau』である。dip in the poolの木村達司を中心に、木村達司、モーガン・フィッシャー、安田寿之の3人の曲をコンパイルされている。タイトルが指し示す「旅行鞄」という名のとおり、さまざまな楽曲が収録されており、なかには、甲田益也子(dip in the pool)、本田みちよ(OVERROCKET)のヴォーカルが入った曲もあれば、ヒーリング・ミュージックだったり、エレクトロニカ的な楽曲もある。木村の言葉を借りれば、「"アンビエント的"要素を記号の中から取捨選択し膨らませた電子音楽」が本作を貫いている。なにより、その作品の中心にdip in the poolの木村達司がいるのがおもしろい。1983年に結成されたdip in the pool。2011年には14年ぶりの作品をリリースしていることからも、自身の変化はもちろん、環境が変わったことによって、音楽へのアプローチに積極的になっていることが見てとれる。
また、本作を木村だけでなく、モーガン・フィッシャー、安田寿之がともに手がけている点に注目すべきだ。ネットを介したシェアという文化が定着し、プロとアマチュアのさかえ目もわかりづらいなかで、木村1人ではなく、彼が信頼すべき経験豊かな2人とともに作品化すること。そうした多様な視点から描くことでも、2013年のアンビエントを捉え直そうとする意欲がみてとれる。僕がアテンドするのはここらへんにして、あとはこれを読んだあなたが、『Portmanteau』をかけながら、そのイメージを確かめてみてほしい。(text by 西澤裕郎)
PROFILE
Portmanteau
dip in the poolの木村達司が中心となって、 木村達司、モーガン・フィッシャー、安田寿之というそれぞれ異なる活動を展開している3人が、「アンビエント」という言葉をキーワードに、彼らがイメージする「アンビエント」をそれぞれが制作し、曲によってはコラボレーションという形で、一枚のアルバムにコンパイルしました。ゲスト・ボーカルに甲田益也子(dip in the pool)、本田みちよ(OVERROCKET)を迎え、アンビエント、エレクトロ、ヒーリング、民族音楽など、様々なエッセンスが絶妙にブレンドされた、2013年のアンビエントミュージックの一つの形がここに誕生です。ジャケットにはモーガン・フィッシャーによる美しいLight paintingが使用されています。
木村達司(dip in the pool)
ファッションモデルとしてカリスマ的な人気のあったボーカルの甲田益也子と共に1983年にdip in the poolを結成。独特な音楽センスとファッショナブルなヴィジュアルが話題を呼び、1985年、イギリスはラフ・トレード・レコード、ヨーロッパほかではヴァージン・レコード、日本ではアルファ・ムーン・レコードよりデビュー。以来、dip in the poolのサウンド・メーカーとしては繊細且つ大胆なトラックと透明感のある甲田益也子のボーカルのマッチングによる浮遊感のあるONE AND ONLYのスタイルをブレる事無く貫き続けつつ、CMや映像音楽も多数手がけている。
Morgan Fisher(モーガン・フィッシャー)
16 歳で始めたアマチュア・バンド「ラブ・アフェアー」でデビュー。 リリースしたシングルが全英No.1を獲得し、18歳の若さでトップ・アーティストに。その後はデビット・ボウイがプロデュースしたモット・ザ・フープルの全米ツアーに参加、その後メンバーとなる。1982年にはクイーンのヨーロッパ・ツアーに、サポート・キーボーディストとして参加。日本に移り住んでからは、Yoko Ono、THE BOOM、喜納昌吉、細野晴臣など多くの日本人アーティストと共演。さらに環境音楽のアルバムからCM音楽、アート系ビデオ、映画音楽と幅広く国内外で活躍中。
安田寿之
電子音楽をベースにジャンルレスに活動する音楽家。元FPM。ROBO*BRAZILEIRAとしてブラジル音楽を歌う等ユニークなソロ活動を主体に、Towa Tei、Atom Heart、Clare and The Reasons、Fernanda Takai等、ジャンル問わず共作・共演。CM、中野裕之、篠山紀信、桑原茂一等への音楽提供も多数。「Red Hot + Rio 2」に、Beck、Caetano Veloso、Bebel Gilberto、David Byrne 等と共に、Red Hot シリーズ17 作で初めて日本から参加。MEGADOLLY レーベル代表として新しい形の「音楽のソーシャル・ハブ」になるべく、直接配信契約するiTunes Storeで多様なアーティスト作品を全世界発表。常に、既成概念を打破する新しい音楽の公表方法を模索 / 実施している。2013年には、1点物の音楽作品と写真を組み合わせた「音楽家の写真展」を行い、広告業界など他業種から注目をあびる。出展作は完売し、これからの自由な発表方法の提示に成功した。
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