「インディだからこそインディに甘んじたくない」——平成生まれのクリエイターたちによるD.I.Y.レーベル、TOKYO RECORDINGSを大特集!!
突如ネット上に現れ、耳の早いリスナーたちの間で話題となったR&Bユニット“N.O.R.K”のヴォーカルOBKRがプロデューサーを務め、コケティッシュな歌声と麗しいヴィジュアルでネットに登場し人々を魅了した“綿めぐみ”を輩出、横浜出身のスケーター4人グループ“Suchmos”のレコーディングを担当するなど、今聴くべき若手アーティストが集結した創作集団、TOKYO RECORDINGS。音源、映像の完パケまですべて自身達 で行うD.I.Y.なレーベルを構成するのは、なんと全員平成生まれのクリエイター4人。そんなTOKYO RECORDINGSをOTOTOYで大特集。綿めぐみのファースト・アルバムをハイレゾ配信するとともに東京都内にある彼らのスタジオに潜入しインタヴューを敢行した。新しいクリエイティヴが世の中を驚かす日は目の前だ。大・大・大注目!!
OTOTOY独占のハイレゾ配信!!
綿めぐみ / 災難だわ(24bit/48kHz)
【販売価格】
ALAC / FLAC / WAV / AAC : 単曲 270円 まとめ購入 1.620円(各税込)
※ファイル形式について
※ハイレゾとは?
【Track List】
1. わかんない / 2. 災難だわ / 3. 東京の空はくもり / 4. 都会 / 5. ご飯 / 6. マザー / 7. わかった / 8. 頼むぞ革命家、私は泳ぐ / 9. モンキージョージ / 10. 山手線
INTERVIEW : TOKYO RECORDINGS
平成生まれの4人は、都内某所にあるレコーディング・スタジオに筆者を招待してくれた。そこには、デジタル・レコーディング機器からヴィンテージ機材まで、数年かけてコツコツ揃えてきた宝物が詰め込まれていた。自分達の手でレイアウトされた室内は、手作り感があるリラックスできる雰囲気に満ちている。友だち経由などで噂を聞きつけたミュージシャンたちがこの場を訪れた様子が、グランドピアノのサインなどから見てとれる。この秘密基地のような場所で、TOKYO RECORDINGSは産声をあげたのだ。
ここでのプロセスを簡単に説明するなら以下の通りだ。プロデューサー的なポジションにN.O.R.KのヴォーカルでもあるOBKRが立ち、楽曲制作からディレクション、レコーディング、ミックス、マスタリングを他の3人が中心となって行なう。パッケージやWEB周り、宣伝などは再びOBKRが行い、すべてがこの4人とスタジオで完結する。そんなピーターパン的な場所と知恵を武器に、彼らは新しいクリエイティヴ・チームとして世の中に羽ばたこうとしている。これからの音楽は若いヤツらが作っていくんだ。この地を訪れ、ますます彼らの動きが楽しみになった。かっこよくて最高な光景を見せてくれ、TOKYO RECORDINGS!!
インタヴュー&文 : 西澤裕郎
今、ちょうど我慢のときですね
ーーTOKYO RECORDINGSは、自分たちのスタジオでレコーディングから完パケまで行なっている平成生まれの4人によるチームですが、年齢が近いってことが発足のきっかけになっているんでしょうか?
OBKR : 最初は別に平成生まれって謳うつもりはなかったんですよ。気付いたら平成生まれしかいなかったっていう感じでしたね。
小島裕規(以下、小島) : 問題意識って言ったら大げさだけど、既存の流れやスタイルと違うことをやりたいというところで近いのがこの4人だったんです。
ーーただレーベルを運営するのではなく、しっかりお金を回して運営していこうというモチベーションがしっかり見えますね。
OBKR : もちろん。まだ全然回ってない状況ですけど、絶対に大きくなると思っているから1、2年くらいはちょっと我慢しようかなと思っていて。っていうのも、以前レコード会社に所属していたときに「自分が何でありたい」っていうものがないまま、話がどんどん進められていたことがあって、それが嫌だったんです。「こういうことをやりたいから、まずこういうの作っちゃおう」みたいなことをお互い話せるのは、この環境しかないし、それをやらないと収益は上がらないだろうと思っていて。今、ちょうど我慢のときですね。
ーー4人で、どういうレーベルにしていきたいか話をしたりしますか?
OBKR : 俺が「ああなりたいから行くぞ!!」みたいな感じです(笑)。XLレコーディングスとか大好きなんですけど、訳のわからない音楽を普通に売っちゃうみたいな人たちがすっげー羨ましいんですよね。だからといって、まったく同じことをやろうって気はないんですけど、XLのクリエイティヴとavexの恍惚さを追求したいっていうのはあります。
ーーあくまでこの場所が中心となり、この4人それぞれがアイデアを持ち寄って形にしていくってことですよね?
OBKR : 曲のアイデアは僕が結構関わったりしますけど、最終的な仕上げの部分は、この3人がやっている感じですね。
小島 : OBKRから目標だけポーンと言われて、そこまでの過程を考えろって感じです(笑)。
OBKR : それって放任してる訳じゃなくて信頼してるんですよ。来たものに対してどんなパンチ打とうっていうことは普通に考えてますよ。そこに関して、俺がやり方をあまり知らないんですよ。ものごとを1から10にするのは楽しいんですけど、0から1を作る部分は3人によるところが大きい。
ヨコハタトクヤ(以下、ヨコハタ) : そういう意味でいうと、最初この船がどうなるのか僕も不安でしたからね(笑)。はじめのことはわりと外注みたいな気持ちでいたんですけど、ここ1、2ヶ月くらいでチームでやっていくことについて考え始めて。
ーーなんで、そう考え始めたんですか?
ヨコハタ : 結局、我慢の時期だっていうことを理解したのと、外でやってる仕事ってケツ(〆切)があるじゃないですか? そういうマーケットの中でやることに疲れてきたっていうか(笑)。海外の音楽をたくさん聴くんですけど、自由なプロダクションの中でスタジオで2ヶ月かけて出てきたようなアルバムを好きになる傾向があるんです。あとは、この4人が同世代っていうのもあると思うし、だんだんOBKRが唱える夢に、いい意味で乗りたいなと思いはじめたんだと思います(笑)。
ローファイに逃げたくない
ーーケツがないっていうのは、いつまででも終わりなく制作してしまう危険性もありますよね。
OBKR : 僕が上手いことケツを決めるんですよ。めぐちゃん(綿めぐみ)のときは、わりと早めにケツを設定して、短時間でどのくらいかかるのかっていうのを理解していったんです。なので、逆に今進めているアーティストにかんしては徹底していないんですよ。ギリギリまで超ゆっくりやっています。
酒本信太(以下、酒本) : その精神状態が大事なんだよね。絶対にこの日までにやらないと信頼を失うような、そういう訳じゃないから。
小島 : クライアントと受注の関係だと「20日です!」って言われたら「はい! 20日ですね!」ってなると思うんですけど、「もうちょっとかかるかもしれない」とか「もうちょっと巻きでできるかもしれない」って確認しながらできる。
ヨコハタ : それに関していうと、クリエイティヴィティの話もそうだよね。例えば、酒本主導のプロダクションに対して全員がちゃちゃを入れてきたり、エンジニアの立場じゃない人がプロダクトも一緒にできる。それってクライアントとエンジニアの関係じゃ成り立たない。そういう意味でも、いい感じに発展してるかなって思います。
酒本 : めぐちゃんの案件をやっていて、僕がうーんとかなってる時に、コジさんが「もうキッチンの音とか録っちゃえばいいんだよ」って急に2人でマイクを持ってきて、キッチンでカンカンした音を録り出して「よし、これインストに使おう」とか言ったりしてね。
ヨコハタ : 起きたら変な音入ってるみたいな(笑)。
ーーあはははは。
酒本 : エンジニアが寝てる間に「ちょっとやっちゃえ!」って言って、俺らも勝手にエンジニアの領域に入ってね(笑)。そういうものがちょこちょこスパークしてブレイクして、いいものになっていく瞬間が何度も起きている。それはこういう状況じゃないと起きないんじゃないかなって。
ーーそのなかで自分たちが好きな音楽を反映させている?
酒本 : そういう感じで何か作るというよりかは、OBKRが持ってきたものに対して1番効果的にできる音楽はなんだろうって進めていく感じです。めぐちゃんの時も、綿めぐみっていう素材がいて、ストーリーがあって、そこに沿っていく音楽はなんだろう? って進めていったんです。そこに、好きものが入ってきちゃうから、結果としては好きな音楽になってたりすると思います。
OBKR : 綿めぐみに関して言えば、フランク・オーシャンの影響がすっごくありますよ(笑)。
酒本 : 早く誰か指摘してほしいよね(笑)。だいたいその時に一番聴いてる音楽とかが影響されているから。
OBKR : 「頼むぞ革命家、私は泳ぐ」かなんか、いきなりミックスでインダストリアルみたいな音入れ始めたりしたしね。
小島 : そうしたブレイクスルー的な意見が交じるってところで、各々の無意識的な嗜好が混濁しているというか。
ヨコハタ : そう考えると、バンドっぽいよね(笑)。各々の担当楽器はあるけど、人のギター・ソロに口を出すみたいな(笑)。
小島 : カラフルなものにしたいっていうことを思うんですよ。もちろん、トラック・メイカーが1人で作り上げるっていうのも魅力的なんですけどね。
ヨコハタ : エイフィックス・ツイン的なね。
酒本 : 今コジさんが主導してやっているアーティストも、いろんなミュージシャンが関わっていて、ドラマーもベーシストも呼んできたり、ちょっとメジャーぶった作り方もしたりするんですよ(笑)。すごくいいミュージシャンが出入りしていたりもするから。そういう人たちに手伝ってもらいつつ、僕たちでコントロールしていくスタイルも次からどんどんやっていきたい。
小島 : 現場で制作費がかさむっていうのがネックですけどね(笑)。ただ、ローファイに逃げたくないというか、これはこれでいいんだよっていうところには行きたくない。
OBKR : インディだからこそインディに甘じたくない、っていう背伸びの仕方をしてるのかなと思います。少なくとも訳わからんものを作るつもりもなくて、奇は衒いたくないんですよ。普通にインディとして出てきたけど、全然メジャーで遜色ないみたいなものは絶対作って行きたいっていうのはあります。
酒本 : それができる環境が実際あるっていうのが何よりなんですよね。とりあえず対抗できるぞと考えている。
「人々を繋ぐチャネル」
ーー綿さんの音源に関してはCDだけでなくVR(ヴァーチャル・リアリティ)を使った施策もしていますが、音楽以外の技術的な新しさとか面白さっていうのも積極的に使っていこうと考えているんですか?
OBKR : 別にテクノロジーに興味があるわけじゃないんですよ。どっちかっていうと、それを人間が使えるようになる事実が楽しいんですよね。VRに感動したのは、俺でもできるんだみたいなところで。しかも作れるんだ!! やばー!! みたいな。あれ自体、技術的には4、5年前からあるんですよ。けど、それが身近に手の届く範囲に来たっていうことで、それを見て喜んでもらえるのがいいんですよ。身近なテクノロジーをぶち込むと人は喜んでくれるからって。
酒本 : ディズニーランドでプロジェクションマッピングが当たり前になったみたいなことだよね。
OBKR : 昔からあったんだけど意識しないじゃん、っていうのはありますね。そういう意味ではテクノロジー寄りに思われがちなんですけど、アナログな手法だったり、口コミとか大事だと思っているし、それこそストーリーが一番大事だと考えている。だから、テクノロジーで奇を衒うことはあまりないですね。
酒本 : ストーリーがあって、その中におもしろいテクノロジーがあって、それがいい感じに機能するから、よし使おう! ってなる。綿めぐみの歌詞サイト見ました? それも彼(OBKR)が考えたんですけど。
OBKR : 歌詞カードを作ろうと思ったら高っ!! と思って。誰も見ないだろうものに投資するのはもったいないと思ったんですよ。いまの子って、みんな家で聴く時もイヤホンなんですよね。携帯のゼロサムゲームで、そこの時間を音楽が奪わなきゃいけないのであれば、もう歌詞を携帯に表示させようと。一番携帯で表示しやすいのって何かな? と思ったら、2chまとめサイトだと思ったんですよ。なのでこんな感じで歌詞を聴きながらスクロールして見れるようにしていて。ここの部分何言ってるんだろう? っていうのは全部注釈つけてるんですよ(笑)。
ーーおお、おもしろい!
OBKR : これ結構反響あったんですよ。流行るかどうかは知らないですけど、おもしろいですよね。
ーーTOKYO RECORDINGSとしての具体的なヴィジョンっていうのはあったりするんですか?
OBKR : ここにちゃんとコミットしていけるっていうのが、やっぱり理想じゃないですか。現実的っすけど(笑)。上場とかもよく分かんないし、メジャーを倒そうとかもないんですよ。メジャーは芸能界だと思ってるから。でも、あれに匹敵するくらいの「あー、この曲やばいね!」「やっぱりTOKYO RECORDINGSか!」ってなるのが理想です。TOKYO RECORDINGSへの入り口が、この曲やばいね!! から入る。ざっくり言うとそんなもんですけど、でも現実的に言うとみんなが飯食えればいいんじゃないですかね。
ヨコハタ : なんかもっとでかいこと言った方がいいんじゃないの? 音楽業界を変えますみたいな(笑)。
OBKR : 業界を変えたいとは思わないね。別に渋谷をジャックしたいとか、ネオヒルズ的なこともないから(笑)。着実にって感じですね。やっぱり、avexの次に来たレーベルってあそこだ!! って言わたら超嬉しいですけどね。田舎の女子高生に聞いても「あそこねー!!」って分かる。そもそも日本だけに留まらず、東南アジアとか行けたらいいですけどね、ベトナムとか。日本の業界を買えるっていうのはなくて単順に地球上でどんな音楽をつくろうかみたいな感じです(笑)。
小島 : そのヴィジョンで純粋にいいもの作りたいよね。マーケットがとか客層とかを考えて、そこをターゲットにしてみたいなことは、あんまり考えないで。
OBKR : そもそも名前がふざけてるんでね(笑)。TOKYO RECORDINGSですから(笑)。一応、作っちゃった以上、SEO対策も上がっちゃってるから、それはちゃんとやらないとなって思うんですけどね。ビジネス的にチャネルを変えたいと思っているんですけど、今チャンネルって人に届かないんですよね。そっちのイノベーションは音楽で起こしたいなとは思うんですけど。
ーー「チャンネルを変える」というのを、もうちょっと具体的に説明してもらってもいいですか?
OBKR : 物があって、消費者がいて、そこを繋ぐためにビジネスがあるじゃないですか? 流通とか、タワレコとか。僕はそれを総称して「人々を繋ぐチャネル」だと思ってるんですよ。今、その血管に悪玉があって血流が止まっている。別にディスってるんじゃなくて、もっとやり方あるだろうみたいな。それこそ俺がN.O.R.K.の穴あきCDを出した時に、コーナーを作って滞在時間を増やせば絶対に売上があがるって言ったんですけどダメで。わざわざCD屋に行くのがめんどくさいから、みんなスマホで音楽聴いたりしているわけじゃないですか。だからといって誰もスマホでCDを買おうっていうのがないんですよね。だって、単順にプラットホームじゃないから。それを真っ先に俺はやっちゃいたい。音楽でチャネルを変えるっていうのはそういうことです。少量でいいから在庫抱えちゃって、スマホで注文できる。めぐちゃんも注文の8割がスマホなんですよ。絶対そこに何かあるんですよね。
ーーもっと、大人にたてつく感じかと思ったけど、そもそもそんなところに興味はなくて、クリエイティヴを求めている空間なんだってわかったのが嬉しかったです(笑)。
OBKR : この記事読んで、ヤバイやつがいたら連絡欲しいですね。絶対に埋もれてるやついるから、地方で。
TOKYO RECORDINGS BRAND NEW ARTIST
TOKYO RECORDINGSに新たなアーティストが加わりました。
その名も"Capeson"(ケイプソン)。私たちが彼と出会ったのは去年の夏。その圧倒的な存在感とパワフルな歌声に惚れ込み、なんと6ヶ月という制作期間をかけてこの楽曲を作り上げました。締め切りに追われないのが、当レーベルの強みかもしれませんね…。
作曲 / プロデュースは小島裕規。彼もまた、才能あふれる平成生まれのプロデューサーです。Aoyama Basementのオーナーでもあり、綿めぐみの「モンキージョージ」のストリングス・アレンジも行っています。初めて彼のデモを聞いた時、これは間違いなく素晴らしい歌になる、と確信しました。N.O.R.K.のアルバムにも参加したストリングス陣、NOKKOやクリス・ハートのサポート・ドラマーとしても活躍する海老原諒など、様々なクリエイターが関わる中で、この曲はさらに磨かれていきました。Capesonとの相性は抜群、奇跡の組み合わせです。
半年かけてじっくり作り上げたこの楽曲、インディの駆け出しレーベルとは思えないクオリティになったと思います。引き続き、TOKYO RECORDINGSは、皆さんを常に驚かせられるよう邁進する所存です。
… 来月には、フィジカル版のリリースのお知らせができるかと思います。お楽しみに。
TOKYO RECORDINGS WORKS
平均年齢23歳 横浜出身のスケーター4人グループ。FUJI ROCK FESTIVAL '14 「ROOKIE A GO-GO」2日目のトリを務めるなど、耳の早いリスナーから注目を集めている。ロック、ソウル、ジャズ、ヒップホップからの影響をバンドに落としこみ、クールでモダンな高い演奏技術で、これまで音源リリースが待たれていた。最近話題のYogee New Waves、Awesome City Club、YKIKI BEATと交流を持ち、NEW STYLEを確立しつつある。ストリート発、最先端のミクスチャー・バンド。
水曜日のカンパネラ / トライアスロン(24bit/48kHz)
水曜日のカンパネラの2015年初EP『トライアスロン』が完成。トライアスロンよろしく、おなじみのサウンド・プロデューサーkenmochi hidefumiに加え、OBKR、オオルタイチがサウンド・プロデュース。
N.O.R.K. / ADSR
現役大学生(2014年時)で結成された2人組、N.O.R.K.のミニ・アルバム。新進気鋭のDJやトラックメイカーをリミキサーとして迎え、過去にフリー・ダウンロードで話題を呼んだ楽曲のリマスターや未発表曲も収録。ミックスを担当したのはキエるマキュウのIllicit Tsuboi。
PROFILE
TOKYO RECORDINGS
平成生まれのクリエイターのみで構成された2014年7月設立の音楽レーベル。
>>TOKYO RECORDINGS Official HP