感染症診療の原則

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Monitoringの誘惑

2011-04-05 | 青木語録
昨晩から旭中央病院に伺い、毎年恒例の感染症集中教育合宿に参加しています。

昨日は当然、一番重要な「感染症診療の原則」の講義。その中で鑑別診断を挙げてから検査・治療を行うことの重要性をお話しました。

逆に可能な限り避けたい診療、それは「まあ一応、検査しておきましょう」といった、「まず何か検査をしたら答え(診断)が与えられるのではないか・・」という期待に基づく診療であることをお話しました。

何か検査をすれば結果が戻ってきます。時には異常値が戻る事もあるでしょう。しかし、その異常値をどう評価し利用するのかという知恵は鑑別診断が伴って初めて見えてくるのです。

闇雲に検査をし、異常値を見つけたら、今度はその異常値をMonitoringしたくなる。異常が更に異常になったりすれば更にMonitoringしたくなる。

これは非常に怖い。

検査を出してMonitoringをすると研修医は診療している気分になるから怖いのです。Monitoringで得られた結果をどう評価するかという準備もなくMonitoringをする診療は危険な誘惑に満ちています。

そしてこれは、福島原発関連の放射能のMonitoringにも通じるのではないか・・と素人的には感じています。Monitoringそのものが目的化し「何かやっている」という精神安定剤的な役割を果たす。測定すれば「○○シーベルト」といった結果が出ます。数値を判断する物差しは何から得られているか、数値がどうならば何をするのか・・。それを示されない編集長には、「まあ検査を続けましょう・・」と言われる患者のような漠然とした不安感が続いていくのです。

写真:旭中央病院。ピカピカ一年生。

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2 コメント

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検査してないと (motoyasu)
2011-04-06 14:47:49
多くの検査ができる状態なのに、あえて検査をしない、あるいはしなくてもよいと判断することは卒後すぐには難しいことと思います。検査ができない状況では、時間外にくる、付き添いのご家族の心配が尋常ではない、β遮断薬服用しているのに心拍数がいつもより多いなど、とても病院の先生には説明しにくいモニタリングがあります。往診では採血もX線できず、酸素飽和度と診察だけで肺炎と診断する場合もあります。元々WBC,CRPは診断には使わないのですが、紹介した時に「何もしていない」と思われるのかなと心配することもあります。研修医の先生方には、自分なりのメルクマールを見つけられるといいですね。
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御礼 (青木)
2011-04-11 15:49:55
motoyasu先生:

いつも現場からのコメントありがとうございます。

(実力があるから不要と分かっているので)検査をしていない時に、「検査をしていないね・・」と言われるのは不快ですね。まあ大抵は中華料理屋でカッパ巻きを頼まれるようなパラダイムの違いが根底にあるのですが・・。

酸素飽和度と診察で肺炎の診察がmotoyasu先生に採血など不要な事も多いでしょう。WBCやCRPの値がいくつでも先生の肺炎のLikelihoodには影響がないでしょうし・・。血培が出来る状況でもないでしょう。

ますますのご健闘をいのります。
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