■はるかなるヒマラヤとイノシシ頭
メインの通りなのに、アスファルトは穴だらけ。
車が揺れるというより、跳ねる。
父と母に子どもが挟まって、3人乗りのバイク。
パパーン、プゥ、パラパラ。
クラクション、クラクション、クラクション。
路地だってぶっ飛ばして逆走してくる。
たまに見かける信号は、全く灯りがついていない。
気合いで横切れ。
目と目で通じ合う。
そうゆう仲になりたいわぁ。
若い男女は闊歩しながらケータイ。
バナナのぶらさげ方とリンゴの積み方には作法がある。
香辛料の積み上げ方にも、作法がある。
オヤジの天秤にも、作法がある。
ドンキングのようなイノシシの頭を置く肉屋にも、作法がある。
電柱に牛がつながれている。
その頭上では電線が25重ぐらいに巻かれている。
ペンキ屋。金物屋。チューブ屋。工具屋。
基本、DiYなんだな。
あちこちへこんだ乗り合いの三輪車はギュウギュウを通り越し、外にあふれた人が車体にしがみついている。
日本語でそれハコノリって言うんだよ。
パパーン、プゥ、パラパラ。
標高1330m、500万人都市。ネパールの首都、カトマンズです。
「マ」ではなく「ズ」、いや、「ドゥ」にアクセントがあります。最初はグー。に近い。
人より神の方が多い町。
36のジャート(民族というかカーストというか、コミュニティ)。
あんた日本人じゃね?とおぼしき人もいれば、日焼けサロンに通い詰めたギリシャ人のようなのもいます。
ぼくが着物で歩いていても、腰に布を巻いた似たような男はたくさんいるので、日本にいる時より目立ちません。
でも、オレの写真を撮れと手招きするオヤジの化粧には頭が下がりました。
町がモヤってるのは、排気ガスか、砂埃か。
道路に座って客を待つ靴磨き3人。
たぶん、来ないね。
しゃがんで、何もしていない男5人。
潔く、日暮れを待っているのね。
道の脇はレンガがうず高い。
壊しているんだろうか。
作っているんだろうか。
勢いよく歩く。
道に出てきて洗濯物を干す女2人。
かいがいしい。
脇の太い木には枝にロープをくくりつけ、ブランコにしている。
おい坊主、そんなに高くこぐと、間違ったら死ぬぞ。
路地を全速力で走り回る子どもたち。
同じく走る、野良犬の群れ。こんな雑踏に。
噛まれたら泡ふいて死ぬぞ。
茶色のヤギと白黒の子ヤギ。
並んで歩くが、親子か。野良か?
この、道をふさいでいる牛も、野良かなぁ。
道を外れると土煙が立ち上っている。
壊しているんだろうか。
作っているんだろうか。
GDPは鳥取県より小さく、一人当たりだと$650、後発開発途上国。しばしば停電となります。
海外にグルカ兵を派遣し、傭兵を産業としている点では、昔のスイスのようですね。
大国に囲まれ、世界の屋根たる山脈を持つのも似ていますが、「第三の男」の台詞、”スイスの同胞愛、500年の平和と民主主義は何をもたらした? 鳩時計さ。” てな のどかさはありません。
2008年に王制が廃止されたばかりですが、第一党の共産党マオイスト(毛沢東主義者)と、連立与党22党!と、国軍、そして大統領と首相とがせめぎ合っています。
日本の政治がまともに見えてしまうじゃありませんか。
しかし、なのに押し寄せる熱気。
ぼくがこよなく愛するこの雑踏の猥雑さは、イスタンブールやハノイ、カサブランカや西安、それらとも似た、大阪よりもでかい人口を持つ都市のみから沸き上がる発酵エネルギーなのでしょう。
カトマンズから少し外れてみる。
寺と仏塔と、たたずむヤギ。
この光景は、知らない。
犬と、牛と、アヒルが歩いている。
干したコメを仕舞い、またコメを干す。
女どもが忙しい。
この光景は、知ってる。
女は働き、男が遊んでいる姿は、モロッコでも見た。
そのコメを産む棚田が眼下に広がる。
陽を浴びて輝く。
その向こう、はるかなるヒマラヤが白い。
村にある学校では、灯と揺れで崩れ落ちそうな狭い校舎に、上品な英国風制服の子どもたち。
女の子たちはピアスを刺し、みな英語を話す。
屈託なく、まっすぐにぼくの目を見抜いてくる。
見たこともない格好をしてコンピュータを手にした不思議なぼくの目を透過して、もっと遠くの、これからの何かを見つめている。
一緒に遊んでくれた、Subi(14)と、Panisuta(13)と、Samita(6)と、Rigen(12)と、Sanjey(2)。
ありがとう。
名刺を渡したら、食べちゃったSanjey、ありがとう。
未来が、あるよね。またいつか、地上で、会おう。
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