約三十年ぶりに伊勢参りに出かけることとなった。かねてより友との約束で再訪を期していた伊勢神宮であるが、その友は幸いにも体調を崩し、同行も叶わずとなった。そして、歳月だけが流れ去ってしまった。いささか奇妙な心持ちではあったが、結局のところ、追悼めいた旅となった。 三十年という歳月は長いようでいて、年を重ねるごとに時の流れは驚くほど速やかになる。前回の伊勢詣でがそれほどの昔であったとは思えない。内宮を訪れてみれば、五十鈴川の風景は昔日のままに変わらず、この伊勢参りを通じて、若い日に抱いていた「日本の古代史を巡る旅」への思いが再びよみがえり、過去の自分との邂逅を果たしたかのような感覚に襲われた。 伊勢に着いて、まずは外宮に参拝することとした。折しも午後三時頃で、神様への御饌が運ばれる時刻であったため、神饌を運ぶ神官たちの儀式めいた参列に興味深く見入った。翌日には内宮に参拝したが、その荘厳な空気感