前回はアノニマスの活動と、サイバー空間における国際法制定が如何に困難であるかを論じた(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2802を参照)。前回の連載で重要な点は、サイバー空間の諸技術が、人をアノニマスの活動に駆り立てるということであった。技術や制度があればこそ、人はそれまで自分が思ってもみなかった活動が実行可能であることに気づく。このことは逆にいえば、我々は自分が思うほどには自らの主体性や意志に敏感ではない、ということだ。 そこで今回は、サイバー空間において人をある意志や選択へ導く技術を、権力の問題を通して考察する。 実行までにコストがかかる“古典的”な権力 部下に命令して書類を作成させる。生徒に命令して宿題を課す。これら日常的な出来事として権力が上司から部下、先生から生徒へ行使されていることがわかる。アメリカの政治学者ロバート・A・ダール(1915~)