新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発・導入が, 国内外で未曾有のスピードで進んでいる。本稿では, 本格的なワクチン導入にあたって, 新規プラットフォームワクチンであるmRNAワクチンとウイルスベクターの開発の歴史と製剤の特徴について, 医療や公衆衛生に従事する者が理解しておくべき点を簡単にまとめた。 現在, 開発が進んでいるmRNAワクチンは, 脂質ナノ粒子などのキャリア分子に抗原タンパク質をコードするmRNAを封入した注射剤である。注射されたmRNAが局所の宿主細胞内に取り込まれ, 翻訳されることにより, 抗原タンパク質が産生され, 抗原特異的免疫応答が起こる1)。 1990年にルシフェラーゼをコードしたmRNAをマウスの筋肉へ直接注射すると, 筋肉でルシフェラーゼ活性を認めることが発見された2)が, これが外来性のmRNAを生体内で翻訳・発現させるというmR