『機動戦士ガンダム』で1980年代に一大ブームを巻き起こした安彦良和さんだが、自作の不振と世界史の激変を受けて89年、きっぱりとアニメ界を去ることになる。「歴史は動く。でも人間は変わらない」。挫折のなかで新たに得た認識を手がかりに、歴史漫画の道に進んだ。 >>インタビュー前編からつづく 「日本はどこで間違ったのか」 歴史に挑む 専業漫画家になって安彦さんが取り組んだのは、古事記に登場する神々や神話上の人物を生き生きと描いた『ナムジ 大國主』『神武』や、日清戦争や日露戦争に材を取った『王道の狗』『天の血脈』など、日本の古代史と近代史に焦点を当てた作品群だ。 いずれも、東アジアの融和を目指す者と覇道を唱える者の対立構図が仕組まれ、理想主義の挫折も主題になっている。アムロ・レイのように弱さや矛盾をはらんだ人間臭いキャラクターたちが交錯する歴史群像劇としての物語は、ガンダム同様、勧善懲悪とは程遠い