文芸評論家・藤井義允の初単著。「脱人間主義的文学プログラム」がサブタイトル。「小説トリッパー」に2020年から2022年に連載されていた原稿をもとに1冊にまとめたもの。扱う作家は、朝井リョウ、村田沙耶香、平野啓一郎、古川日出男、羽田圭介、又吉直樹、加藤シゲアキ、米津玄師。各作家論に入る前に、社会状況論、現代文学概論が入る。1990年代から2020年代の、社会・文化状況を概観し、論じられる作家・作品たちが位置付けられる全体像(地図)が示されている。 一読して感じたのは、思っていた以上に「ディストピア」という言葉が使われていたな、というものだった。論じている作家は、どちらかといえば文学に分類される作家たちだが、私が『ディストピアSF論』で作品を論じながら掘り下げていった社会状況は、これら日本の作家も多分に共有しているのだと理解できた。『ディストピアSF論』では平野啓一郎の『ドーン』を論じていて