前回はこちら. ---- ここから訳文 ---- 6. 効力・規範・会話 ここまで,効力の規範的な次元をはっきりさせる際に,会話での役割の観点で言語行為を特徴づけようと模索してきた.だからといって,言語行為は会話の場面でしか遂行できないと言いたいわけではない:相手につかつか近寄って,あんたの車がそこにあるとウチの車が出られないんだと指摘し,またつかつかと立ち去るような場合だってある.ここでは確言がなされているけれども,会話を交わしてはいない.おそらく,書斎でひとりきりのときになにか自問して,それっきりで終わることもあるだろう――自問して自答することもなく,自分との会話をはじめずに終えてもいい.だが,そうは言っても言語行為の「生態学的なニッチ」は会話にあるのかもしれない.そう考えると,言語行為のタイプをその環境から切り離してそれ自体を単独で検討できるかもしれないにせよ,それでは言語行為特有の