これが逆の立場だったらと考えてしまう。激しい非難と賠償請求さえ起きていることだろう。 中国から日本への微粒子状物質PM2・5の飛来である。昨春に続いて今年も日本各地での観測濃度が上がり始めた。 すでに注意喚起情報を出した自治体もある。石原伸晃環境相は国民に日常生活での注意を呼びかけた。 これから5月にかけて濃度が急増する可能性がある。注意喚起が出されたときには、不急の外出を見合わせたり、フィルター機能の高いマスクを使ったりするなどの自衛策が必要だ。 PM2・5は、大気中に漂う顕微鏡サイズの微粒子で、有害な二酸化硫黄や有機化合物を含む。強い発がん性を持つことが昨年、世界保健機関(WHO)によって確認されている。 有毒ガスが、日本海を越えて風下の日本の大気を汚染しているわけである。極めて重大な地球環境問題だ。 酸性雨の発生を例として中国からの越境汚染は、これまでにもあった。日本は技術協力などの
安倍晋三首相を議長とする政府の産業競争力会議が、成長戦略の改定の柱として「女性の活躍推進」を掲げた。 少子高齢化で労働力人口は急速に減っていく。「女性の活用なくして日本の未来はない」と認識しなければならない。 ライフスタイルは男女の別なく多様であるべきだ。「専業主婦」の選択が尊重されるのは当然として、働く意欲を持つ女性の思いがかなう環境づくりが急がれる。 「女性が輝く日本」を目指し、政府は、2020年までに「25~44歳の女性就業率73%」とする目標を示している。 まず取り組むべきは妊娠や出産で職場を去らざるを得ない状況の改善だ。6割が出産を機に退職しているが、4人に1人は「仕事を続けたかった」としている。 政府は待機児童の解消に向けた保育所の整備や育児休業給付の増額、女性登用に取り組む企業への支援強化なども打ち出している。こうした政策の実現を着実に進めていくことが重要だ。 女性が、正規社
虚偽表示対策 「食」の信頼回復につなげたい(12月24日付・読売社説) 「食」の信頼を取り戻す契機にしたい。 有名ホテルや百貨店で食品の虚偽表示が相次いだ問題で、政府が対応策をまとめた。 来年の通常国会に景品表示法の改正案を提出する。 改正案の柱は、監視体制の強化だ。農林水産省や経済産業省などに調査権限を付与する。出先機関を持たない消費者庁の調査だけでは限界があるからだ。 産地偽装を監視するため、全国に約1300人配置されている農水省の「食品表示Gメン」などを活用すれば、効率的なチェックが可能になろう。 調査・指示の権限しかない都道府県には、罰則を伴った措置命令を出せる権限を与える。命令に従わない業者には、3億円以下の罰金を科すことができる。 こうした体制強化が虚偽表示の抑止力となるよう期待したい。 改正案では、業者側にメニュー表示の責任者設置も義務づける。責任の所在を明確にすることで、意
メニュー偽装 「誤表示」の強弁は通らない(10月26日付・読売社説) 「偽装ではなく、誤表示だ」という強弁は通用するまい。 阪急阪神ホテルズが運営する八つのホテルのレストランなどで出された多くの料理で、メニュー表示と異なる食材が使用されていた。 虚偽表示は7年以上に及び、約7万9000人に提供された。 阪急阪神ホテルズは記者会見で、「メニュー表示と食材が合っているかどうか、チェックする意識が欠落していた」「従業員が(食材に関して)無知・無自覚だった」と釈明している。 だが、一部の従業員は、料理の中身がメニュー表示と異なることを知りながら、「問題ないと思った」と話している。故意に偽装していたという疑いは拭えまい。 虚偽表示の例は、次のようなものだ。メニューには「芝海老(えび)」と記載していたが、実際はバナメイエビだった。芝海老の仕入れ値が1キロ・グラム2500円なのに対し、バナメイエビは14
最高裁大法廷は、結婚していない男女間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を、嫡出子の半分と定めた民法の規定を、違憲とする初判断を示した。 憲法は法の下の平等を保障しており、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のないことを理由に不利益を及ぼすことは許されない」とした判断は当然だろう。速やかに、民法も改正すべきだ。 「婚外子の相続分は嫡出子の半分とする」という規定は明治31年に設けられ、昭和22年の民法改正でも引き継がれた。54年には法務省が両者の差異をなくす民法改正案をまとめたが、国会には提出されなかった。 平成5年以降、東京高裁などでこの問題での違憲判断が相次いだが、最高裁は7年、「民法が法律婚を採用している以上、著しく不合理とはいえない」とする合憲判断を出し、婚外子側の訴えを退けていた。 ただしこれを覆す今回の最高裁の判断は、法律による婚姻家族を否
婚外子相続差別 家族観の変化に沿う違憲判断(9月5日付・読売社説) 日本人の家族観の変化を踏まえた歴史的な違憲判断である。 結婚していない男女間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を、結婚した夫婦の子の2分の1とした民法の規定について、最高裁大法廷は「法の下の平等」を保障した憲法に違反するとの決定を出した。 「区別する合理的な根拠は失われた」との理由からだ。 最高裁は1995年、民法のこの規定を「合憲」と判断した。今回、正反対の結論になったのは、婚外子を巡る状況の移り変わりを重視した結果と言えよう。 決定は、相続制度を定める際に考慮すべき要件として、国の伝統、社会事情、国民感情を挙げた。そのうえで、これらの要件は「時代と共に変遷するため、合理性について不断に検討されなければならない」との見解を示した。 民法が国民生活に密接に関わる法律であることを考えれば、当然の指摘である。 近年、婚外
医療事故調査 機能する制度へ課題は多い(8月25日付・読売社説) 重大な医療事故を防ぐための制度となり得るだろうか。解決しなければならない懸案は多い。 病気の治療で患者が死亡した際、原因究明と再発防止を図る「医療事故調査制度」が作られることになった。 厚生労働省は、専門家による検討会が公表した報告書を基に、制度の概要を定めた医療法改正案を取りまとめる方針だ。2015年度の創設を目指す。 患者の信頼を得られる制度にすることが何より大切である。 医療事故による死者は年1300~2000人と推計される。 医療事故が起きた場合、患者側は損害賠償請求訴訟や刑事告訴など司法手続きによって原因解明を求めるのが一般的だ。 だが、裁判では医師や看護師の責任の有無に判断の力点が置かれる。必ずしも事故の教訓が再発防止に生かされていない。 新制度では、死亡事故が起きた医療機関に院内調査を義務付ける。医療機関は調査
「はだしのゲン」 教育上の配慮をどう考えるか(8月25日付・読売社説) 原爆の悲惨さを描いた漫画家・中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」について、松江市教育委員会が市立小中学校に閲覧の制限を要請したことが波紋を広げている。 現在、松江市内の大半の学校図書館では、教師の許可がないと子供が自由にこの作品を読むことができない状態が続いている。 市教委は生々しい原爆被害の場面ではなく、旧日本軍にかかわる描写の一部を、過激で不適切と判断した。アジアの人の首を面白半分に切り落とす。妊婦の腹を切り裂いて、中の赤ん坊を引っ張り出す。女性を惨殺する、といった描写についてだ。 成長過程の子供が本に親しむ小中学校図書館の性格を考えて、市教委がとった措置と言えよう。 憲法は、表現の自由を保障し、検閲を禁じている。市民が広く利用する一般の公立図書館で蔵書の閲覧を制限することは、こうした観点から許されない。 ただ、小
行き交う人のあいさつにも「暑いですねえ」のひと言がまず口をつく。この1週間の猛暑は文字通り半端でなかった。 高知県四万十市では4日連続で最高気温が40度を超え、12日には観測史上最高の41度を記録した。11日深夜の東京の最低気温は30・4度だった。これは平成2年に新潟県糸魚川で記録した30・8度に次いで、史上2番目に高い最低気温だという。 昼の40度前後の猛暑はもちろん厳しいが、夜の蒸し暑さも体にこたえる。熱中症で倒れるお年寄りが全国で急増した。猛暑はまだ続きそうで、夏バテによる体力消耗も心配だ。高温と水不足が農漁業に与える打撃も小さくない。 だが、めったにない記録的な夏である。負の影響だけでなく、プラスの側面にも目を向けたい。 あまりの猛暑に、帰宅途中の1杯の生ビールが楽しみという人も多い。少しだけぜいたくをしたいという夏の気分が積み重なれば、熱風がアベノミクスの追い風に転じることだって
最低賃金アップ 消費拡大の呼び水になるか(8月8日付・読売社説) 安倍政権の強い意向を受け、最低賃金が引き上げられる。デフレからの脱却につなげることができるだろうか。 厚生労働省の中央最低賃金審議会は、今年度の最低賃金の引き上げ幅を全国平均で時給14円を目安とすることを決めた。引き上げ率は約2%で、10円以上のアップは3年ぶりだ。 最低賃金は、企業が従業員に支払う賃金の下限をいう。改定後の最低賃金は、全国平均で時給763円となり、フルタイムで働いた場合の月収は2000円程度増えて12万~13万円が見込まれる。 家計を維持するうえで、まだ十分ではないものの、賃金底上げの一歩とは言えよう。 今年、最低賃金引き上げが注目されたのは、デフレ脱却を目指す安倍政権の経済政策「アベノミクス」と関連付けられたからだ。 政府は6月にまとめた「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)で、2%を上回る賃上げを
警察白書 犯罪抑止は迅速な対応から(8月6日付・読売社説) 犯罪の摘発は警察の重要な責務だ。併せて、犯罪の未然防止に全力を挙げることが治安を守る上で欠かせない。 刑法犯は減少の一途である。昨年の認知件数は138万件で、ピークだった2002年の半数にも満たない。 防犯カメラや警報装置の普及で、空き巣や車上荒らしなどの窃盗が減ったのが大きな要因だ。 ところが、内閣府の世論調査では、8割の人が「治安は悪化した」と回答したという。 今年の警察白書は、犯罪件数の減少と国民意識の食い違いについて、「子供、女性、高齢者」が被害者となる事件が目立つため、と分析している。統計を見る限り、もっともな指摘である。 子供に対しては虐待が絶えない。児童虐待の摘発は昨年、472件で最多となった。被害者のほとんどが女性である家庭内暴力(DV)の認知件数は約4万4000件、ストーカーは約2万件に上り、いずれも最多である。
大阪誤認逮捕 ずさんな捜査に驚かされる(8月2日付・読売社説) ずさん極まりない捜査と言うほかない。警察と検察には、猛省と徹底検証を求めたい。 堺市のガソリンスタンド(GS)で1月に起きた窃盗事件で、大阪地検堺支部は男性会社員の起訴を取り消し、男性に謝罪した。大阪府警も誤認逮捕だったことを認めた。 男性は、事件と無関係だったのに、85日間も勾留され、休職を余儀なくされた。取り調べの際には、捜査員から何度も呼び捨てにされ、「あなたは普通じゃないんですよ」などと侮辱もされた。重大な人権侵害である。 誤認逮捕の最大の原因は、男性を犯人と決めつけた見込み捜査に尽きると言っていい。 駐車中の車から盗まれたカードが、GSで使われていた。府警が防犯カメラを調べたところ、ガソリンが販売された時刻に男性の姿が映っていた。府警はこの画像を逮捕の決め手とした。 ところが、弁護人の調査で、防犯カメラの時刻がずれて
食品ロス削減 消費者の意識改める第一歩に(7月15日付・読売社説) まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」が増えている。企業と消費者、政府が連携し、削減に取り組みたい。 日本では年間1700万トンの食品廃棄物が発生し、このうち食品ロスは推計で500万~800万トンに上る。国内のコメの収穫量とほぼ同規模で、あまりにも巨大な損失である。 対策を検討してきた政府が主導し、食品メーカーや卸業者、コンビニ、スーパーなど約40社が加工食品の賞味期限に関する商慣行の見直しに着手することを決めた。削減に向けた第一歩と言える。 食品・流通業界には「3分の1ルール」と呼ぶ商慣行がある。製造日から賞味期限までの3分の1にあたる時期を小売店への納品期限とし、残り3分の2の期間を店頭での販売期間とする。 納品期限を過ぎた食品は、卸売業者からメーカーに返品され、ほとんどが廃棄されるため、食品ロスが増える要因となって
熱中症予防 過度に節電せず冷房の活用を(7月11日付・読売社説) 日本列島は連日、猛暑に見舞われている。 熱中症に十分注意し、夏を乗り切りたい。 10日も各地で最高気温が35度以上の猛暑日となった。山梨県甲州市では、今年になって全国で最も高い39・2度を記録した。今月に入り、熱中症で病院に搬送される人が相次ぎ、死者も出ている。 連日の猛暑は、太平洋高気圧と、中国大陸から押し出されたチベット高気圧が日本上空で重なる「ダブル高気圧」が原因だ。この暑さは今週末まで続くという。 気象庁は、この夏の気温は全国的に平年より高めになると予想している。ダブル高気圧が去っても、警戒は怠れない。 熱中症は、高温多湿の状態で、体温の調節機能が働かなくなって起きる。吐き気、だるさが表れ、重症になると意識が薄れる。 猛暑日が多かった2010年には1700人余が死亡した。 熱中症の予防で重要なのは、水分と塩分をこまめ
列島各地で猛烈な暑さが続いている。9日に観測史上最高の39・1度を記録した山梨県甲州市(勝沼)をはじめ、関東甲信、東海地方などでは連日の「猛暑日」(最高気温が35度以上)となり、熱中症で病院に搬送される人も相次いだ。 この暑さは12日ごろまで続く見通しという。さらに気象庁の3カ月予報でも、今夏は全国的に気温が高めになる傾向が強い。「暑く長い夏」を乗り切るため、節電よりもまず健康に留意して、熱中症予防に万全を期したい。 今年は関東甲信から九州地方までの梅雨明けが平年より6~15日早かったうえ、大陸側から張り出したチベット高気圧が日本の上空で太平洋高気圧と重なり、気温上昇に拍車をかけているという。 今はまだ、体が暑さに慣れていない。とくに高齢者や乳幼児のいる家庭では、こまめな水分、塩分の補給と冷房の使用などで、熱中症を未然に防ぐことが大切だ。 熱中症は、高温多湿の環境で体の熱を十分に放出できず
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