『多摩川飲み下り』『酒呑まれ』などの著者・大竹聡さんが、吉行エッセイのもつ「大人の魅力」について解説してくださいました! 吉行淳之介は憧れの作家だ。博識にして、才気に溢れ、世俗に通じ、書くものおしなべて粋であり、見目麗しく、一度ラジオで聴いたことがあるけれど、声がまた太くてマイルド、ゆったりとした話しぶりが洒落ていた。 万事につけ真逆の筆者からすれば嫌味な存在になっていて不思議ではない。けれど、ときどき読みたくなる。声を聴きたい、といったほうが正確かもしれない。そんなときはいつも、『吉行淳之介エッセイ・コレクション』全四巻のいずれかを手に取り、開いたそのページから読んできた。今回、前回のシリーズからの抜粋に新たな作品も加えて再編集されたことはファンとしてなにより嬉しい。 吉行淳之介は、作家としての身のこなし、酒場での嗜み、広くて深い交友、男女の難しいところ、おもしろいところ、題材を選ばずス