将棋は対戦中のプレーヤーが何を食べるかが公表される珍しい競技だ。八冠を成し遂げた藤井聡太とてその例外ではない。デビューからの連勝を積み上げていた時には、出前が運び込まれる様子がワイドショーで取り上げられ、タイトル戦に名乗りを上げると、その注文したおやつが毎度のようにSNSを騒がせた。 「将棋めし」の話題の中心にあった21歳はこれまでの大一番で何を口にしてきたのか。初タイトル挑戦の一手目から振り返ると、興味深い傾向が見えてきた。(全3回の第1回/#2、#3へ) ※肩書、値段はすべて当時 はじまりはカツカレーだった 藤井聡太がタイトル戦の舞台で初めて頼んだのは、東京・千駄ヶ谷の将棋会館近くにある「ほそ島や」のカツカレーだった。時は2020年6月8日。新型コロナへの恐怖が列島全体を覆っていたさなか。おやつは感染症対策の一環でクッキーとマドレーヌの2品が両対局者の控室に置かれた。意思を持って頼めた