「イスラム国」日本人拘束事件で殺害されたと見られる日本人人質二名、湯川遥菜さんと後藤健二さんに哀悼したい。 「殺害された」と見るのは日本政府の判断にならう以上はない。遺体の受け取りや犯人を逮捕して司法に引き出すなどの点からすれば、この事件はまだ終わったわけではない。が、人質が殺害された現在、その生存について対応するという事態は終わった。そこまでのとりあえず「事件」とする。 痛ましい「事件」だったが、「イスラム国」のジハーディ・ジョンが公開に関わったこれまでの人質殺害事件では、人質が救出された事例はなかった(と思われる)。今回も過去例を踏襲しているという点では、大きく意外という結果ではなかった。 別の言い方をすれば、ジハーディ・ジョンが出てくる時点で、実際には「イスラム国」の人質ビジネスとは別部署の扱いということなのかもしれない。 さらに過去例との比較で言えば、彼の要求は一貫して「イスラム国
事件発生の直後(1/21)に上げた記事-後藤健二の疑惑-が反響を呼んでいる。エキサイトがBlog発行者用に設えているレポートを確認すると、1/22に234...事件発生の直後(1/21)に上げた記事 - 後藤健二の疑惑 - が反響を呼んでいる。エキサイトがBlog発行者用に設えているレポートを確認すると、1/22に234.801件、1/23に345,074件、1/24に175,889件、1/25には459,648件のアクセス数が記録されていた。10年間続けてきたが、こんなに多くのアクセスが殺到したのは初めてのことだ。昨年、小保方晴子事件について論じた連載が好評だったけれど、1日に10万件を超えるアクセスが集中した記憶はない。1日に46万件という途方もない数字を見て、こんなこともあるのかと正直驚かされる。初めてこのBlogを見たという人も多いだろう。1/21の記事で論じたことは簡単にいえば二
年明け早々の7日、世界中に衝撃が走る大事件がフランスで起きた。イスラム過激派がムハンマドやISIS指導者の風刺漫画を掲載する新聞社を襲撃したというテロは、先月、久しぶりにロンドンを訪れて、最近の欧州情勢をヒアリングした私にとっては、決して意外性のある事件ではなかった。正直、やはり、ついに起きたかという感じである。 そして、この悲劇を「過激なイスラム教徒がなせる凶悪事件」とだけ捉えるのはあまりに短絡的だと言わざるを得ない。日本と同様、少子高齢化で悩む欧州が、失われた20年に苦しむ日本とは異なり、それなりの経済成長が出来たのは移民による生産年齢人口の補給があったからだ。しかし、リーマンショックに端を発した欧州経済危機が顕在化し、失業率の増大が深刻な問題になってくると同時に、今度は移民問題が欧州各地で大きな社会問題となってきた。 欧州への移民を送り出している国々は、トルコからドイツ、バングラディ
「イスラム国」による日本人人質事件について思ったことをとりあえずブログに記しておきたい。 ツイッターのほうではすでに前もってコメントしたが、72時間の期限でのリアクションはないだろうと私は見ていた。理由は、どちらかというと「イスラム国」に対して欧米ほど危機感ももたず、脅威にも感じていない日本国民を、期限通りの処刑によって激怒させ、その結果いっそう欧米側に付かせることにすれば「イスラム国」にとって利益にはならないだろうと思われたからだ。 「イスラム国」としては国際世界が一致するよりは、割れていたほうがよい。この手法は北朝鮮の外交戦略と同じである。ついでにいえば、西側諸国としても中東の利害は割れていたほうが、ローマによる分割統治的な意味合いで、利益にはなる。ただしシリアに端を発した今回の事態は三すくみのような複雑な分割にはなり、誰が利益かという構図は崩れてしまった。 「イスラム国」側の思惑だが
中田考さん(イスラム法学者でムスリム)が叩かれてるようなので、ちょっとだけフォローしたい。 (なお自分はムスリムではないし、かの美しいと有名なクルアーン(コーラン)も注釈でしか触れたことがない) ワリと面倒くさい宗教であるイスラーム六信五行なんて訳されることもあるが、ムスリムは義務としての決め事が多い。 判りやすいところでいくと、ザカート(Zakat)というのがあって、これは義務的な施しにあたる。 翻訳の難しいところで、これは税金として解釈されることもあるし、喜捨つまり寄付の一種と看做されることもある。 財産税による社会福祉と言うのが実体に近く、アッラーフに寄進して、それを皆が使う、という再分配機能になっている。 と、言うようにイスラームというのは宗教であるのだが、その根幹が社会制度になっている。 王様が世捨て人を経て悟った宗教とか、大工の息子が突如悟って国教になっちゃった宗教とは違い、
池内恵(いけうち さとし 東京大学准教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について、日々少しずつ解説します。有用な情報源や、助けになる解説を見つけたらリンクを張って案内したり、これまでに書いてきた論文や著書の「さわり」の部分なども紹介したりしていきます。
2015年01月20日21:35 カテゴリ本 イスラーム国の衝撃 普段は献本をいただいたからといって書評することはないのだが、本書がオフィスに届いた日に人質事件のニュースが出たので読んでみた。 「イスラーム国」は国と名乗っているが、実態はアル=カーイダの新バージョンである。宗教的にはスンナ派で、指導者バグダーディはイスラームの最高指導者「カリフ」を名乗るが、別に世界のイスラム教徒がカリフと認めたわけではない。政治的には従来のテロリストと変わらないが、イラクとシリアの一部を領域支配して注目された。 イラク戦争でいったん沈静化したようにみえた中東のテロリストがまた勢いを取り戻したのは、「アラブの春」で独裁政権が次々に倒れたためらしい。それまで政権に抑え込まれていた各国のイスラーム勢力が武装し、国境を超えて集まったのだ。中東を支配するようになったアメリカへの反感も強い。 この背景には、英仏の植民
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