自分と向き合うための曲
──なるほど。ちなみに最近だと井上さんはどんな音楽を聴いてたんでしょうか?
井上 : この曲をレコーディングしてた当時は、ワイズ・ブラッドをよく聴いてました。それ以外にも、シャロン・ヴァン・エッテン、シーア、カレン・O、アーロ・パークスとか、最近は女性ヴォーカルの音楽を聴くことがわりと多かったので、いま思うと無意識でその影響もあったのかもしれないですね。
鈴木 : そもそもかっちゃんはエモーショナルな曲が映えるヴォーカルだと思ってたので、この曲でそこをしっかり提示できたのは僕も嬉しいですね。
──リリックについてはいかがですか? 東京というモチーフは〈架空の街〉を描いた前作との対になってるようにも感じたのですが。
鈴木 : 歌詞ではなるべく普遍的なところを目指したいし、「自分には関係ない曲だな」と感じる人がいないように、地名とか固有名詞を入れることはいままで避けてきたんです。ただ、この曲で歌っている「東京」というのは、どこかとどこかの「距離」を象徴していて。それは昔の自分といまの自分の距離とか、そういう意味合いでもあるんですけど…。うーん、ちょっと説明が難しいな。
礒本 : 僕は「東京の夜」のデモを最初に聴いた時「これは自分を見つめ直すための歌なんじゃないかな」と思ったんです。それこそ開かれていくような「fever」との対比で、「東京の夜」には内側に向かっていくようなイメージがあったので、レコーディング時もそういう解釈で臨んでました。当時は僕自身いろいろ悩ましい時期だったのもあって、「東京の夜」は個人的にも思い入れが強い曲になりましたね。
鈴木 : うん、まさに「東京の夜」は自分と向き合うための曲だったんだと思います。自分がいまる場所をもう一度見つめ直しながら書いた歌だし、そういう視点って誰もが共感できるんじゃないかなって。
──「東京の夜」はサウンド面も「fever」とは対極の、ボトムがしっかりした演奏に仕上がっていますね。
川島 : ギター・パートに関していうと、「東京の夜」は「fever」よりも自分に委ねられた部分が多かったんです。そこで僕自身はこの曲をミドル・テンポのロック・バラードとして受け止めて、うまくハマるようなギター・サウンドを考えてみた結果、やっぱりここはアルペジオでいきたいなと。で、個人的に僕はスピッツがいちばん好きなバンドなので、三輪テツヤさんがこの曲にアルペジオを乗せるならどうするだろうなと想像してみて、それで浮かんできたのがあのフレーズなんです。
井上 : そうだったの!? いまはじめて聞いたよ(笑)。
川島 : それは蛇足なんですけど、この曲をレコーディングした後にちょうどスピッツが新曲(「紫の夜を越えて」)を出して、その曲のイントロが僕の考えたアルペジオにちょっと似てたんですよね。偶然なんだけど、それが個人的にちょっと嬉しかったです(笑)。
井上 : スピッツよりも早かったってこと?
鈴木 : いやいや、曲を出したのはスピッツの方が先だから(笑)。
──(笑)。そしてもうひとつ驚いたのが、今回の2曲はロンドンのアビーロード・スタジオでマスタリングしているんだとか?
川島 : そうなんです。たまたま繋がりがあったのでダメ元でお願いしたら、引き受けてもらえて。
井上 : しかも担当してくれたのは、フォンテインズDCやレディオヘッドの作品も手掛けてきたクリスチャン・ライトさんだったんです。私たちがいままで聴いてきた作品をたくさん手掛けているエンジニアさんにお願いできて、本当に嬉しかったですね。
礒本 : 実際、仕上がりもすごく良かったんです。それこそ「fever」はより広がりある感じになったし、「東京の夜」の内側に深く入ってくるような感じもうまく出ていて、嬉しかったですね。
──ここから先の展開も気になります。今回の2曲を経て、ローラは次にどう動いていくのでしょうか?
鈴木 : いま取り掛かってる曲があるんですけど、その曲は昨年のアルバムでやってきたことと、今回のシングルでやったことがすべて生かされてる感じですね。つまり、頭でしっかり作り込んでる部分と、勢いで一気にいく感じがどちらもあるというか。とにかくいい曲が出来そうなので、楽しみにしていてほしいです。
編集 : 梶野有希
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PROFILE : Laura day romance
東京を中心に活動中の男女ツイン・ヴォーカル・ギターポップ・バンド。2017年結成。男女ツインボーカルのコーラスワークを武器に、 ニューエイジの日本語ポップスを紡ぐ。 2018年1st EP『her favorite seasons』が発売するや否や各店舗で売り切れ続出し、 数々のイベントや「SUMMER SONIC2018」にも出演。 同年9月には2nd EP「because the night .ep」をリリースし、 2019年2月には自主企画“Blanket ghost Thanksgiving”を開催し満員ソールドアウト。 ファースト・シングル「sad number / ランドリー」が耳の早いリスナーの間で話題に。 昨年6月にはファースト・フル・アルバムをリリースし、9月には初の配信ワンマンライブを成功に収める。 洋楽に影響を受けつつも日本的な叙情を織り交ぜたポップミュージックで、 アートや映画のようないつの時代も愛される音楽を奏でる。 インテディーズシーンでも特異な存在感を現す新世代。
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