ワインは好きだけれど、レストランでの作法がイマイチわからないという人は多い。ワインスクールのトップ講師である紫貴あきさんは「敷居が高いと思われがちなワインの世界ですが、ポイントさえ押さえればそれほど難しくありません」という――。

※本稿は、紫貴あき『キャラクターでわかるワイン図鑑』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

まずは“プロローグの一杯”を

重い扉、ゴージャスなシャンデリア、ふわふわの絨毯じゅうたん……。こんなレストランで席についたら、きっとすぐに「お飲みものは何になさいますか」とソムリエが聞いてくることでしょう。

ここで「食事も注文していないのに……」と思ってはいけません。まずは1杯、飲みながら食事を選ぶのが格式高いレストランの流れ。ほんの少しアルコールを入れれば、緊張もほぐれて和やかなムードになります。音楽の前奏、小説の前書きの役割にあたるお酒、これが食前酒(アペリティフ)です。

「とりあえずビールで」と言いたいところをぐっと我慢して、今日はワインで始めてみませんか。おすすめはスパークリングワインです。炭酸ガスが空っぽの胃袋を刺激して、食欲が湧いてきます。グラスの底からゆらゆら立ち上がる泡がゴージャスで気分も高揚します。

特別な日には、ぜひシャンパンを。複雑な香りと滑らかな口当たり、生き生きとした酸味は、まさにスパークリングワインの最高傑作です。

「炭酸はちょっと」という人は、辛口の白ワインもおすすめ。ポイントは甘すぎないこと。甘いと血糖値が上がって、まだ食事もしてないのに満腹感を覚えてしまうからです。

シャンパンはどの料理にも合う万能選手

食前酒を飲み終えたら、分厚いワインリストを渡され、いざ注文! でも、どんなワインを頼もうか迷ってしまいますよね。

グラスで頼むならば、泡⇒辛口の白⇒(ロゼ/オレンジ)⇒辛口の赤⇒甘口の順に頼んでいくとよいでしょう。一般的に、この順番でワインの味わいは重たく感じることが多く、軽いものから重たいものへと飲んでいったほうが、ワインのよさを引き出すことができるからです。

テーブルセッティング
写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
※写真はイメージです

これはコース料理との相性という観点でも理にかなっています。たいていのコースは、軽いものから重たいものへと順番に出てきます。軽い食事には軽いワイン、重たい食事には重たいワイン。軽さを合わせたほうが、組み合わせもよいのです。

ボトルで注文して、最初から最後まで1本のワインで通すのも素敵です。その場合は、料理との相性や同席者の好みも気になるところですね。そんなときにおすすめしたいのが、またもやスパークリングワイン。炭酸ガスが食べ物のクセを包み込んでくれるため、合わない料理はないのです。スパークリングワインは、食前酒にも食中にも使える便利なワインなのです。中でもシャンパンは万能選手として知られます。

シャンパンには焼いたパンのような複雑な香り(これを「シャンパン香」と呼びます)が含まれています。この香りがさらに食べ物のクセをカバーしてくれるため、普段はワインと組み合わせるのが難しいと言われるような食事(魚卵、酢の物、デザートなど)でも合わせることができるのです。

乾杯からお食事、デザートまで合わせられるのが嬉しいところ。最後に飲むシャンパンを「しめシャン」と呼ぶファンもいます。