ポッコリ腹を解消する方法はあるのか。理学療法士の中村尚人さんは「ウエストを絞るトレーニングといえば、体育座りで頭を持ち上げる“上体おこし”、四つん這いで肘をつく“プランク”が一般的だ。予防医学の観点では違和感しかない。お腹が細くならないどころか、ケガをする危険性もある」という――。

※本稿は、中村尚人『逆腹筋の教科書 人体の構造的に正しい腹筋運動の新標準』(KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。

腹筋を鍛える3つの運動

突然ですが、あなたは「三大腹筋運動」と聞いて、何を思い浮かべますか? おそらく、最初に思い浮かんだのは、「上体起こし運動」でしょう。足上げ腹筋も、「頭を上げるか足を上げるか?」の違いだけで、上体起こし運動の仲間です。

「プランク」を思い浮かべた人もいるかもしれませんね。これで、二つ。

では、あと一つは何でしょう?

腹筋には「縮める」「伸びる」「固定する」という三つの働きがあります。「縮める」は上体起こし運動、「固定する」はプランクが相当します。では、「伸びる」に該当するものは何か?

それが、本稿で紹介する「逆腹筋」です。

本稿の目的は、「伸びる」腹筋運動である「逆腹筋」を三大腹筋運動の一つとして提唱し、世に知ってもらい、定着させることです。

なぜ人間は2足歩行できるのか

この「伸びる」に相当する腹筋運動は、残念ながら長らく不在でした。

ここで重要な事実があります。腹筋の本来の役割とは、「伸びる」ことなのです。私たち人間が犬や猫のような四つ足動物と異なり、上半身をまっすぐ立てることができるのは、腹筋の「伸びる」力が働いているからです。

もちろん、お腹を「縮める」「固定する」ことは、生活や動きのなかで時に必要です。しかし、直立姿勢を保つため必要な「伸びる」力と比べれば脇役でしかありません。医学的、解剖学的な観点から見ても、腹筋の役割は「縮める」「固定する」よりも、「伸びる」のほうが圧倒的に優勢だと言えます。

にもかかわらず、この強い力が注目されていない。使いこなすことができていない。「腹筋運動といえば上体起こし運動」という固定観念にとらわれて、トレーニングの方法としても、十分に認識されていない。

それは非常にもったいないことだと、私は思うのです。「人類にとって、大きな損失だ」と言っても過言ではありません。

ですから「伸びる力」の大切さについて、しっかりお伝えしたいと思います。