新しい裁判員法による裁判が開始されて、まだ間がないのですが、大騒ぎしたマスコミの報道も落ち着いて、その運用上の問題が少しづつ出てくるようになりました。ここでは、実務家と研究者による座談形式の論稿に注目してみました(坂根=村木=加藤=後藤「裁判員裁判の経過と課題」法学セミナー660号、2009年12月、10頁以下)。挙げられている論点のいくつかを紹介し、コメントを加えておきたいと思います。 1.裁判員制度の滑り出しは、まずは順調といってよいが、まだ量刑が争点となる事件なので、本格的な重大否認事件がどうなるかによって真価が問われることになる。 2.公判準備手続の運用も、全体的には適切といってよいが、公判で裁判員にあまり負担をかけたくないという意識から、やや絞りすぎが生じているのではないか。 3.公判では、検察官が「見て分かる」方向を目指しているが、争いのないところは調書による扱いもまだ珍しくな
