本日は講演をする機会をいただきまして、誠に有り難うございます。私は日本近代史の研究、とりわけ江戸から明治の時代にかけての社会の移行について研究しています。そういう者にとって、三田演説館の壇上で話をするのは特別な機会です。言うまでもなく三田演説館という場所は、近代日本において、言葉によるコミュニケーションによって世の中を形成していく試みが組織的に行われた、最初期の現場です。そのようなわけで今日は演説家になった気分でしゃべらせていただこうと思います。 近代日本の原型はいったいどのようにつくられたのか、自分の研究を顧みながら、また多くの先学の研究に学びながら、今日は自分なりの見通しを提示してみたいと思います。「戦争・立身・ジェンダー」と掲げました通り、柱は3つあります。抽象的に言うと、戦争とはつまり暴力の契機です。立身とは競争の契機。ジェンダーとは性別役割分離あるいは性別役割分業の観点です。近代