本展は、豊田市美術館のコレクションに、他館や個人所蔵家の作品もお借りして、19世紀末から第二次大戦後までの時期を中心に、美術だけでなく、建築、音楽、文学、ダンスにまで及んで相互に連関しあう「抽象の力」を、新たに汲み取ろうとするものである。キュレーションは、作家である岡﨑乾二郎氏。勤務館の展示は、どうしても客観性に欠けたり、自画自賛になったりする恐れがあるので、活動報告としてはよくても、レビューとしては取り上げにくい。けれど本展は、岡﨑氏による企画(担当は千葉真智子学芸員)なので、ここでレビューとして扱わせてもらうことにする。なにより、美術の規範を形づくり、歴史の保存庫となるはずの美術館というものを、いま改めて考え直すためにも、この展覧会はとても重要なのである。 図1 会場風景[撮影:青木謙治] 1995年に開館した当館のコレクションは、良い意味でも悪い意味でも、通史的にはなりえていない。収