Missing The Revolution: Darwinism For Social Scientists 作者: Jerome H. Barkow出版社/メーカー: Oxford Univ Pr on Demand発売日: 2005/12/01メディア: ハードカバー購入: 3人 クリック: 26回この商品を含むブログ (24件) を見る 第5章は前章の社会生物学論争史を受けて,現在の進化心理学に対する批判の総説になる.筆者はロバート・クツバンとマーティー・G. ハセルトン.二人とも新進気鋭の進化心理学者で,クツバンはコスミデスとトゥービイの直弟子のようだ. 本章では進化心理学へのよくある批判を整理して,そもそもありもしないかかしを仕立ててぶん殴ろうという筋悪の批判と,真摯に受け止めるに足る批判に分けて概説している. <筋悪な批判> 1.遺伝的決定主義 進化心理学は遺伝的決定論だと誤
The Science of Love 作者: Robin Dunbar出版社/メーカー: Wiley発売日: 2012/11/20メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見る 本書はロビン・ダンバーによる「愛」についての本だ.特に「fall in love:恋に落ちる」という現象,そしてその結果としての「ロマンティックな関係」を扱う.ロビン・ダンバーはダンバー数で有名な人類学者,進化心理学者.最近はエッセイや共編著の論文集をいくつか出しているが,本書はダンバー数を用いて言語の進化的な説明を行った「ことばの起源」以来久しぶりの進化心理についての科学啓蒙書ということになる. 第1章は導入.この「恋に落ちる」現象については,当初西洋文化特有のものではないかという議論があったということから始まる.いかにも文化相対主義者が喜びそうな言説だが,実際によく調べるとこれはヒューマンユニ
Paleofantasy: What Evolution Really Tells Us about Sex, Diet, and How We Live 作者: Marlene Zuk出版社/メーカー: W. W. Norton & Company発売日: 2013/03/11メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 本書は進化生物学者マーレーン・ズックによる,アメリカの「安直に農業以前社会を理想とするライフスタイル運動」への批判書だ.ズックはハミルトン=ズック仮説で知られ,性淘汰や昆虫のリサーチが本職の進化生物学者だが,一面では筋金入りのフェミニストでもあり,進化心理学について基本的な学問のあり方としては認めているものの,その個別の仮説(特に性差が絡むもの)の当否については結構辛辣なコメントをよく行っている.本書でも辛口コメントがあり,進化心理学者による喧嘩腰の書評*1など
Risk Intelligence: How to Live with Uncertainty (English Edition) 作者: Dylan Evans出版社/メーカー: Free Press発売日: 2012/04/17メディア: Kindle版この商品を含むブログ (21件) を見る 第1章 なぜリスク知性が問題になるのか エヴァンズによるリスク知性.第1章はそれが人生や社会にどのように重要であるのかを扱う.エヴァンズは最初に(恐らく架空の)4人のプロフィールをあげている.人のウソを確率的思考で見破ったり,相場のムードに流されないリスク知性指数:RQの高い人.常に楽観的だったり,何事にも確率は半々と思ってしまうRQの低い人が登場する. そしてリスク知性について定義をおく.それは「確率を正確に見積もることのできる能力」だ.ではなぜこの能力が人生において重要だと考えるべきなのか.
Risk Intelligence: How to Live with Uncertainty (English Edition) 作者: Dylan Evans出版社/メーカー: Free Press発売日: 2012/04/17メディア: Kindle版この商品を含むブログ (21件) を見る 本書はディラン・エヴァンズによるヒトの認知にかかる本だ. ディラン・エヴァンズは進化心理学の入門書を書いたり,進化心理学からみた「感情」の本を書いたりしている.というわけで私は彼が進化心理学者だという認識だったが,このブログを書くために調べてみるとなかなか面白い経歴を持っている. 1966年にイギリス,ブリストルに生まれる. 25歳ぐらいまでは一旦牧師になろうとして神を信じていないのでやめたり,語学で食っていこうとしたりふらふらしていたのだが,そこからラカニアン精神分析のトレーニングを受けて19
ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか? 作者: ダニエル・カーネマン,友野典男(解説),村井章子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/11/22メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 204回この商品を含むブログ (46件) を見るファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか? 作者: ダニエル・カーネマン,友野典男(解説),村井章子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/11/22メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 8回この商品を含むブログ (28件) を見る 本書はヒトの心の二重過程(そしてそのために生じる様々な認知的なバイアス)や効用評価にかかるプロスペクト理論で有名なダニエル・カーネマンによる一般向けの啓蒙書である.心の二重過程にかかるバイアスは発表以来すでに40年近く,プロスペクト理論も30年近く経過している.
近年トゥービー&コスミデスが提示した進化心理学の理論的内容は次のようなものだ 脳とは自然淘汰によってデザインされた環境から情報を抽出するするコンピュータである 個々の人間の行動はこの進化したコンピューターによって環境から抽出した情報に応じて生じる。行動を理解するには、行動を生んだ認知的プログラムを明瞭にする必要がある 人の脳の認知的プログラムは適応物である。これらが存在するのは、祖先が生き残って繁殖することができるような行動を生み出すためである。 人の脳の認知的プログラムは今では適応ではないかもしれない。これらは祖先の環境において適応的だった 自然淘汰によって生じたのが、脳は多くの異なる特殊な用途のプログラムから成り立っており単一の一般的な構造物ではないことである 進化した計算する構造物である私たちの脳を描き出すことは文化的社会的現象をきちんと理解するのに役立つ Evolutionary
The Better Angels of Our Nature: Why Violence Has Declined 作者:Pinker, Steven発売日: 2011/10/04メディア: ハードカバー 本書は認知科学,認知言語学,進化心理学者であるスティーヴン・ピンカーによる最新刊で,ヒトの歴史における暴力減少傾向という現象を扱っている. この「ヒトの社会において,暴力は歴史を通じてほぼ一貫して低下する傾向にあった」という主張は多くの読者にとっては驚きと懐疑をもって迎えられるだろう.特に文明が起こり,国家間戦争が生じるようになる前の狩猟採集社会が非常に暴力的であったことはあまり知られていないし,中世の農村社会は平和だったと思っている人も多いだろう.さらに二つの世界大戦とホロコースト,さらに全体主義国家による大規模な粛正を経験した20世紀,現在の途上国における内戦による荒廃や自殺テロの
The Better Angels of Our Nature: Why Violence Has Declined 作者: Steven Pinker出版社/メーカー: Viking発売日: 2011/10/04メディア: ハードカバー購入: 8人 クリック: 239回この商品を含むブログを見る ここまで9章を費やして,ピンカーは歴史の上に現れる6つの暴力低下傾向を示し,それに関連するヒトの本性を5人の悪魔と4人の天使として描いてきた.では今後どうなるのか,私達はどうすればいいのか.ピンカーはまず「私は楽観しているわけではない」とコメントする.物事は複雑で,様々な条件により異なる軌跡を描きうるのだ.ピンカーは楽観とは知的傲慢であり,簡単に将来予測や単純な政策議論をすべきでないという立場を取っている. そして,最終章はどのような力が,6つのプロセスを通じて5人の悪魔を4人の天使が抑えてきた
The Better Angels of Our Nature: Why Violence Has Declined 作者: Steven Pinker出版社/メーカー: Viking発売日: 2011/10/04メディア: ハードカバー購入: 8人 クリック: 239回この商品を含むブログを見る 4人目の天使「理性」.理性の向上により非暴力の適用範囲は増える.そしてヒトはこれにより長い平和,新しい平和,そして権利革命を可能にしたのか? ピンカーはこの理性による非暴力適用範囲の広がりに関連して,一般知性とフリン効果を詳しく取り上げている.ピンカーの議論は以下のようなものだ. ウルトラ左翼もおばか右翼も一般知性の存在を否定するが,これは実際に計測できて,学校や社会での成功を予測できる ではフリン効果とは何か. まずそれはテストに慣れたわけではない.知識が増えたわけでも,算数や国語の早期教育で
じわじわとやってます. 原文が(ぼくにとっては)なかなか難しいこともあって,進み具合はゆっくりしてます.12月18日現在で,ようやく第7章にとりかかろうか,というところ. 序文 Preface 1 導入 Introduction 2 ユーモアはなんのためにある? What Is Humor For? 3 ユーモアの現象学 The Phenomenology of Humor 4 ユーモア理論の学説略史 A Brief History of Humor Theories 5 ユーモアの認知・進化的理論が答えるべき20の問い Twenty Questions for a Cognitive and Evolutionary Theory of Humor 6 感情と計算 Emotion and Computation 7 ユーモアをこなせる心 A Mind That Can Sustain H
The Better Angels of Our Nature: Why Violence Has Declined 作者: Steven Pinker出版社/メーカー: Viking発売日: 2011/10/04メディア: ハードカバー購入: 8人 クリック: 239回この商品を含むブログを見る ピンカーによるより善き天使.進化に寄り道したあと3人目のモラルが登場する. IV. モラルとタブー 冒頭でピンカーはモラルのネットの効果は暴力減少や平和化にとってはマイナスだっただろうと書いている. 世界はモラルに溢れている.そしてモラルが元になっている暴力の総量は,利用や征服の暴力よりはるかに大きいだろう.モラルはどんな地獄も作り出せる.動機は過剰評価されているのだ. しかしモラルは時にプラスの効果をもたらす.人道主義革命,権利革命はそれによっているのだ.モラルはイデオロギーをもたらすとともに
The Better Angels of Our Nature: Why Violence Has Declined 作者: Steven Pinker出版社/メーカー: Viking発売日: 2011/10/04メディア: ハードカバー購入: 8人 クリック: 239回この商品を含むブログを見る ピンカーによるより善き天使.ここまでは共感と自制を扱ってきた.ここで「暴力減少という時間的な変化はヒトの生物学的進化によるものか」という問題を取り扱っている.このような短期で生じたとは考えにくいところだが,きちんと議論しておこうということだろう. III. 進化による暴力減少はあったのか? 実際に「平和化,文明化を通じて遺伝的進化はあったのか?」という質問はピンカーに対してよく投げかけられるのだそうだ. 確かに平和化した社会では同情や自制自体が有利になりうるのでそれらの遺伝的要素は増え,サイコパ
誘惑される意志 人はなぜ自滅的行動をするのか 作者: ジョージ・エインズリー,山形浩生出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2006/08/30メディア: 単行本購入: 18人 クリック: 344回この商品を含むブログ (104件) を見る 1年ほど前の本.表紙の雰囲気や書店の展示棚から行動経済学系の本かと思って油断して後回しにしていたが,読んでみるとむしろ自由意思*1とは何かについての興味深い本であった.ただしとても読みづらい.1つには扱うジャンルが哲学と心理学と経済学と生物学にまたがっているにもかかわらず,初心者に向けての配慮はかけらも見せずに密度の高い議論を繰り広げるスタイルで,すべてに通暁していないとなかなか簡単に議論について行けない.また叙述スタイルも難解で,歯ごたえたっぷりであり,各章にまとめがついていなければ遭難必至という感じである.しかしがんばって読む価値はある本だ. 本
id:Shorebirdさんのブログで、エインズリーの『誘惑される意志』についての日記が上がっていました。その中で、双曲割引がどのように進化論的に説明できるかの仮説が書かれていました。 ありそうなのは,個人の効用の評価関数が不安定だということだ.今欲しいものは明日には欲しくないかもしれない.2年後ならなおさらだ.この評価期待値の低減率が時間に対して一定でなく,ある条件が満たされているうちは小さく,何らかの事情が生じて必要でなくなると急に大きくなるのであれば双曲割引の方が合理的だろう. もうひとつ考えられるのは,将来に入手が確実だということは動物でもヒトの農業以前の環境でもあまりなかったであろうということだ.入手確率は一定割合で逓減するのではなく(それなら指数的に割り引くべき)ある条件の満たされているうちは低減率が低く,どこかで(嵐があったり,別の誰かに食べられたりして)急に入手確率が低くな
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