刑罰は、治安維持のためにあるだけではなく、犯罪者の人権を保護するためにも必要である。犯罪に対する罰則は、国家による刑罰によって定められ、それ以外の制裁は不当だと見なされ、犯罪者が余分な人権侵害を受けずに済むことになる。 犯罪者に対して、人々は、道徳的怒りから、非難・罵倒し、時には石を投げつける等、制裁を加えるおそれがある。また、企業が就職差別をしたり、福祉が生活保護を受けさせなかったりと、犯罪者差別を行い、社会的制裁を加えるおそれがある。さらに、被害者から無制限の報復を受けることも考えられる。 刑罰制度は、そのような無制限の社会的制裁を禁止し、刑罰を終えたら、犯罪者でなくなり、基本的に一般人として扱うというシステムなのである。法治国家では、刑罰を終えた人間に対して犯罪者として制裁を加えることは、いかなる場合においても許されないし、たとえ受刑中でも私的制裁は許されない。 刑罰やそれにともなう