2013年秋から冬にかけてロンドンの大英博物館で開かれた史上最大規模の春画展「春画-日本美術の性とたのしみ」は、日本国内に波紋-ある疑問を投げかけた。それは大英春画展の日本巡回が頓挫したことでより大きくなり、いまなお宙に浮いたままになっている。「なぜ、日本で春画展を開けないのか」-。 「これは、自国の文化・歴史を現在のわれわれがどう受け止め、捉えるべきかという重要な問題につながる疑問」と指摘するのは、大英博物館プロジェクトキュレイターとして春画展準備に携わった、国際日本文化研究センター特任助教の石上阿希さん(35)だ。日本で初めて春画研究で博士号を取得した石上さんは、博士論文をベースに『日本の春画・艶本(えほん)研究』(平凡社)を上梓したばかり。「単に、春画の性的表現の特異性を見せるのではなく、春画がどのような社会や文化の中で存在していたのかを示すことができてこそ、春画展の意味がある」とい