裁判員制度のスタートや相次ぐ不祥事、冤罪(えんざい)事件によって司法への関心が高まる中、元特捜検事や弁護士らが司法界の内情を描いた小説の出版が相次いでいる。近年ベストセラーになった海堂尊(かいどう・たける)さんの「チーム・バチスタ」シリーズや大鐘稔彦(おおがね・としひこ)さんの「孤高のメス」など現役医師による小説と共通するのは、その道の専門家ならではの豊かな臨場感。それだけではなく、自身が身を置いてきた世界への疑問を、フィクションを通じて表現したいという問題意識も背景にあるようだ。(戸津井康之)「ならでは」の専門知識 今年初めにデビュー作「弁護士探偵物語 天使の分け前」が出版された法坂一広(いっこう)さん(39)は、福岡県在住の現役弁護士だ。 小説を書き始めたのは2年前。毎晩仕事を終え、事務所に戻ってからの数時間を執筆にあてた。その原動力になったのは、当時、弁護を担当した2つの事件だという