<骨董品シリーズ その13> サイレン 所 長 山 下 充 康 太平洋戦争の末期、東京では毎日のように空襲警報のサイレンを聞かされた。庭の一隅に掘られた防空壕に避難させられるたびに土臭い暗闇が恐ろしくて、空襲警報解除のサイレンを待ち遠しがったものである。 音による合図には半鐘、太鼓、ほら貝などがあるけれど、手でたたいたり口で吹いたりせずに機械まかせで大きな音を放射することができる点でサイレンは便利な音源である。ゴルフ場でも落雷警報にサイレンが使われている。確かにサイレンの音は雨の音にもマスクされずに聞き分けることができるから広い範囲に合図を送るのには都合が良いらしい。 以前、この紙面に実験用の音源として音叉とオルガン・パイプを紹介したが、これらはいずれも室内での規模の小さい実験に使われる音源であった。大音響が要求されるような大規模な屋外実験にはしばしばサイレンが音源として使われたようである