先週の講座で「憲法とは国家権力を縛るものだ」といった主張が必ずしも正しくなく、むしろ一方的に国家=悪、国民=善だと決めつけていないか、と述べました。今回は憲法を考えるうえで避けて通れない「国家」について考えます。 ◆国家に2つの意味 結論を先に言います。「国家」には2つの意味があります。つまり本来の「国家」と「政府」です。その両者をきちんと区別して考えないといけません。 例えば「国を愛する」「国を守る」という場合の「国」「国家」について考えてみましょう。ここでの「国家」とは、父祖伝来の祖国、先人たちが歴史的に歩んで来た「国民共同体」を指します。歴史の中で団結したり争う時代はあっても、固有の伝統や文化のなかで国民がともに生きてきた運命共同体、これが本当の意味の「国家」です。 これに対して「国を相手に裁判を行う」「国家からの自由」といった場合にも「国」や「国家」という言葉が用いられます。しか