2012年9月・12月の筆者の現地情勢報告では、中国で大規模な事業を展開・計画している台湾の企業グループが、台湾のマスメディアの所有経営権を取得し、新聞やテレビの持つ社会的な影響力を中国での事業展開のための補完的資産として利用しようとする動きが広がっていることを報告した(川上[2012a,b])1。また昨年来、中国での事業展開をはかる台湾のテレビ局が、中国からの要求に応じて人気の高かった政治討論番組を終了したことや(『自由時報電子報』2012年12月14日、『りんご日報ウェブサイト版』2012年11月12日)、中国への批判的な報道をめぐって経営陣と対立した雑誌の編集長が辞職したこと(『公民新聞』2013年2月4日)等も報じられている。 政治学者の呉介民は、中国の興隆と中台間の政治・ビジネスネットワークの形成が台湾の民主政治に及ぼす影響を(負の)「中国ファクター」と呼ぶ(呉[2012])。台
