2024年4月、米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」に選出された上野千鶴子氏。40年超にわたり日本の女性学・ジェンダー研究をけん引してきた上野氏に、「フェミニズムとは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想」だとする考え方の背景と、若い世代に託す思いを聞いた。 上野 千鶴子 UENO Chizuko 1948年、富山県生まれ。東京大学名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク(WAN)」理事長。女性学・ジェンダー研究のパイオニアとして教育と研究に従事。高齢者の介護とケアも研究テーマとしている。 「アグネス論争」 上野さんがフェミニズムの論客として注目されるようになったのは、1987年の「アグネス論争」の頃からだ。人気歌手のアグネス・チャンさんが、テレビ番組収録の場に乳児を連れてきたことで賛否両論を巻き起こした。「職場に私生活を持ち込まない」という「美学」を背景