「怠け者いねがー、泣ぐ子いねがー」。大みそかの夜、大声で雪の集落を練り歩く異形の鬼々から逃げ惑う子供たち。秋田県男鹿市を中心に続く民俗行事“なまはげ”について誰もが抱くイメージだ。だが、日本でもっとも少子高齢化と過疎化が進む同県にあって、この古来よりの風習も存続の危機に瀕(ひん)していた。(宮原啓彰) 「泣く子どころか子供そのものがいない。子供や新妻たちを戒めようにも、若い世代がどんどん減っている」。そう語るのはなまはげの発祥地とされる男鹿市真山地区の「真山なまはげ伝承会」の菅原昇会長(64)。 一口になまはげといっても集落ごとに、鬼(来訪神)のいでたちや訪問時の立ち居振る舞いなどでおのおのの独自のしきたりがある。面だけをみてもどこかユーモラスな顔立ちをしたものから、大人でも泣いてわびたくなるほど恐ろしい形相をしたものまでさまざまだ。 男鹿には約80の集落があり、かつてはそのほとんどに独自