先日、「菜根譚(さいこんたん)」の評釈本に巡り合い、「これはこれは」と相好を崩して手に取ってみた。ところが、ページを開くや、唖然(あぜん)とし、また愕然(がくぜん)とした。何と読み下し文に現代仮名遣いが採用されているのだ。 昭和21年施行の「現代かなづかい」から数えれば、はや半世紀以上が経過し、今や天下公認の趣があり、意識して調べてみると、その手の本が珍しくないことが分かった。読み下し文に現代仮名遣いを適用するなど言語道断。それはほとんど古典の破壊行為だ。 かつて「現代仮名遣いは仮名遣いにあらず」と言った国語学の泰斗がいた。筆者も同じ意見だが、新聞ではその現代仮名遣いを現代仮名遣いで批判するという妙なことになってしまうので、いつも居心地が悪い。情けない話だが、社内の表記ルールに則して、欠陥だらけの現代仮名遣いの、その欠陥の一つ、音便表記について次に指摘してみたい。 キウリ(胡瓜)をキュウリ